東京電力とオリンパスの株の暴落は、長期投資家にとっては大きな衝撃でした。東京電力株は安定した高配当が期待できる銘柄として、またオリンパス株は高い技術力を背景に長期にわたって成長が見込める銘柄として、長期投資家にとっては欠かせない存在だったからです。その期待があっという間に崩れて、株を長期に持つことの意義と難しさを改めて問われた事件でした。
私も、株は長期に持ち配当金で生活をすることを目指していますので、幸い両銘柄の保有はありませんでしたが、ひとごとでは済まされません。持っていたとしたらどうしていたでしょうか。
まず、もっていない理由として、私の投資法を簡単に説明しますと・・・。
(ポートフォリオ)持ち株は10銘柄以内。そのうちコアとして3銘柄、残りはコア予備軍として保有しています。持ち株全体の評価額の割合は、コア3銘柄が3分の2、残りコア予備軍が3分の1程度としています。
当初はすべてコア予備軍ですが、その中から上昇期待の強い銘柄については、少しずつ持ち株数を増やしてコア銘柄に仕立てます。ただ基本は配当取りですから、コアもコア予備軍も配当率が1~1.5%に低下したら売却し、ポートフォリオからはずします。
(銘柄選定の条件)コア予備軍になるためには、ファンダメンタルとくに配当利回り2%以上で、増益基調にあること、株価の値上がり期待が大きい銘柄でなくてはなりません。
事業の性格からある程度の成長と配当金が約束されている電力・鉄道といった公益株や、財務内容がよく配当水準も一定水準に達している大型の優良株などは、今後の値上がりに対する期待という点で、また内容の分からない新興市場の小型株は、いくら成長性があり値上がりが期待できても、長期にわたって存続することに不安があるため、選定の対象にはしていません。
(儲けの基準)株式投資の資金は、生活費などの資金とは完全に分離した一種のファンドのような形で運用しています。ファンドは原則として現金を持たないことにしていますので、株を売却した資金でコア予備軍を買い増しし、コア銘柄の入れ替えをします。銘柄ごとの買い入れコストは、もちろん記録しておきますが、資産の管理はすべて時価評価で行います。したがって儲けは、配当金総額と時価評価が基準となり、買い値から上か下かではありません。ただ、買い値と時価とのずれは、税務申告することで節税になりますので、値洗いをして損はきちんと申告します。
以上から、東京電力もオリンパスも事件が起きた時点では、私のポートフォリオにはありません。あくまでも仮定の話として、両銘柄がポートフォリオのコア銘柄であったとすると、売却するかコアからはずさなくてはなりません。問題はどの時点で行うかです。
東京電力株の場合、3月11日に2,121円であったものが、震災事故が伝わると連日ストップ安で、3月17日に798円まで急落し一応の底を付け、23日の1,049円の戻り高値まで回復します。この時点で、事故の概況が一応はっきりして、無配の可能性も出てきました。そこで東京電力株は、1,000円まで戻った段階で全株損切りします。
オリンパスは、仮にコアにあったとしても、配当利回りが1.5%を切った2,000円以上で売却していたと思われます。したがって事件が発覚した時点(10月14日前日の株価2,480円、予定配当金30円、配当利回り1.2%)で、コア銘柄に留まっているとは思えません。一部を残してコア予備軍に残っているかもしれませんが、その場合には、事件の推移をもう少し見守り、配当減に繋がるようでしたら即売却します。
仮に両銘柄がコアにあったとすると、損切りで持ち株の評価額はかなり減ることになります。私の場合、相場の底では持ち株の評価額が、天井時の2分の1になることまでは覚悟していますので、仮に東京電力株が事件前の40%で売却したとしても、全体としては何とか持ちこたえられる勘定にはなっていたと思われます。
そうはいっても、持ち株は絶えず注意して、この種の予期できない悪材料に対応する準備は怠らないようにしたいものです。