【書評】『ディアスポラ』勝谷誠彦著

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予見と警鐘に満ちた書

 3・11体験後、日本人の精神風景は大きく変容したが、同じことは文学シーンにもいえる。たとえば、川上弘美の『神様 2011』や高橋源一郎の「恋する原発」など、3・11小説と呼べるような作品群が発表されていることは、その証左である。3・11以後ではなく、それ以前に、しかも今から10年も前に発表されたという事実において、『ディアスポラ』は他の3・11小説とは一線を画する。衝撃的な内容は、すべての読者を巻きこみ、圧倒し、自分自身の立ち位置を再確認する行為へと促すだろう。

 本書には2つの中編が収められている。表題作は、チベットのキャンプで生活する50人ほどの日本人を視察するためにやってきた「私」の体験を綴(つづ)る。「事故」の後、世界中に散らばった日本人のキャンプを巡回する仕事に就いた国連職員の「私」が、高度4500メートルの高地で見たものは、過酷な環境と異なる文化の中で生きる日本人の姿であった。

 作中で、「事故」の詳細は明らかにされない。しかし、日本人がディアスポラ(民族離散)に追いこまれ、亡国の民となった理由は、原発事故以外に考えられない。「私」は同僚のイスラエル人との対話から、ユダヤ人におけるタルムードのような求心力たる存在が日本人には欠落していることに気づく。国家の後ろ盾をなくした民族はどのように生きるのか。離散した日本人がアイデンティティーの拠(よ)り所(どころ)とすべきものとは何か。本作にはそのような根源的な「問い」が立てられている。





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