大阪といえば、生活保護率全国1、全国学力テスト最下位クラス、かつて2番だった人口で横浜に抜かれ、繊維産業は過去のもの、IT・家電は新興国の追い上げで地盤沈下、日本を支える自動車・社会インフラ産業を持たない・・・、などの沈滞イメージを、関西弁とお笑いでごまかしている・・・、と見ている人もいるかもしれません。
実は私もその一人だったのですが、最近は変わってきました。都市の入り口であるJR大阪駅ビルが、見違えるようになりました。ホーム上にできた大きな屋根のあるコンコースから、新しいデパートとショッピングモールに続き、新しい景観と近代的な街並みに生まれ変わりました。変化は東京以上です。
これを後押ししたのが、東日本大震災とリニア新幹線ではないかと思っています。
変わったのは大阪駅だけではありません。大阪府議会で、橋下知事が提案した「君が代起立」と、議員を109から88に削減する「議員定数削減」の二つの条例が可決成立しました。
これは、地方議員選挙で知事与党となる大阪維新の会が、過半数を抑えたことによるものですが、難しい議案を既存政党の反対を抑え成立させたことは、指導者の力量の違いを見せつけたものとなりました。民主党ができもしないことを並べて、立ち往生しているのといい対照といえます。
さて、その大阪で11月27日に大阪市長選挙が行われます。テーマは、府市を再編して広域行政を一元化する大阪都構想。
争うのはアナウンサーから民主党の推薦で市長になった現職の平松邦夫氏(66)と、弁護士から自民党の推薦で府知事となり、府民からの支持を受けている地域政党・大阪維新の会を率いる橋下徹氏(42)の二人となると見られています。橋下氏は今回の市長選では、来年の2月まである任期をやめてまで立候補するのです。
「え!知事をやめて市長選に出るの。知事と市長とどちらがえらいの?」
いい質問です。大阪府の人口は882万人、そのうち大阪市263万人、堺市83万人と二つの政令指定都市を持っています。したがって府知事かコントロールできる人口は536万人、全体の60%程度です。
この二重構造は、何も大阪だけではありません。大きな政令指定都市を抱える神奈川県や愛知県でも同じですが、橋下氏は一本化のため大阪都構想を掲げて動きだしました。
第一弾は今年春の地方議員選挙でした。結果、府議会では橋下氏率いる大阪維新の会が過半数を占めましたが、大阪市議選と堺市議選では過半数に届きませんでした。それでも第1党の座は獲得しました。とはいえ、このまま平松市長の再選を許せば、大阪都構想の実現は困難になるとの判断から、橋下氏は府知事の職を投げ出して市長選に望むことになったようです。
橋下氏としては、市長と府知事選挙という二つの賭けにでたわけですから、市長選に破れ腹心が立候補している府知事選も落としてしまうと、構想の実現どころか今後の政治生命にも大きな影を落とすことになります。背水の陣を引いての選挙になります。
橋下氏の公約としては、大阪都構想以外に、市職員数を直ちに5%、将来的に20%削減するほか、義務的経費全体では1年以内に約1割、将来的に3割以上削減。職員の天下りを全面禁止し、受け皿となっている外郭団体の民営化など・・・多岐にわたっています。
一方の平松氏のほうは、大阪市が英経済誌の「住みやすい都市」のランキングでアジア1位に選ばれたことや、街頭犯罪の減少などを挙げ、実績をアピールした上で、合理化についても実現の意欲を示し2期目に望みます。大阪都構想に対しては、府の権限を大阪市に移す特別自治市を主張しましたが、政党からの支持がえられないとして取り下げてしまいました。
両氏とも無所属で出馬し、既成政党の力は借りないようですが、民主党は以前からの関係から平松氏を押すものと思われます。自民党は先に石原幹事長が橋下氏指示を表明しましたが、市議会レベルでは急激な改革案に反対して、自公とも民主党と組んで平松氏支持に動いています。
面白いのがマスコミで、例によって民主党よりの朝日は平松氏支持に、読売・産経は橋下氏支持に回っています。事前の予想では、橋下氏有利といわれていますが、これからの展開次第、激戦が予想されています。
さて、大阪市長選がなぜ日本を変えるのでしょうか。それは今日本が抱えている難問の縮図だからです。貧富の格差、二重行政の無駄、地方自治のあり方、エネルギーと産業空洞化、公約を掲げても実行しない政治・・・。私は、なによりも「働かなくて食ってゆこう」とする今の風潮を変えて欲しいと思います。
問題の解決に選挙を選んだということは、前回の総選挙でできもしないマニフェストで政権交替を果たし、今日の混乱を招いている現状を目の当たりにすると、必ずしも最適な選択ではないような気がします。とはいえ、混乱したまま一向に出口が見えない状況の打破には、もう一度はっきりした政策を示して、選挙で選挙民の審判を受けるしか道はないと思われます。
今回の市長選挙は、その道を選んだようです(二人とも言ったことはきちんとやってくださいよ!)。これが成功すれば、問題を選挙で解決するという民主主義のルールが定着し、政治体制を大きく変え、総選挙も案外早い時期に行われることになるかもしれません。
私はI LOVE OSAKAですが、大阪には住んでいません。大阪が沈滞イメージから立ち直り、名実ともに「住みやすい都市」のランキング1位になり、日本を引っ張って欲しいものです。