≪枠にとらわれ現実を直視しない≫
対日外交に約30年間、携わってきた米国務省のケビン・メア元日本部長の新刊『決断できない日本』が、発売から約1カ月で10万部を突破する異例のベストセラーになっている。
■日米交渉の舞台裏を克明に
メア氏といえば、「沖縄の人はごまかしとゆすりの名人」など差別的発言をしたとして今年3月、国務省を更迭され、辞任。沖縄県をはじめ国内で、いまなお反発心を抱く人も根強いが、メア氏は出版の動機をこう力説する。
「『ゆすり』という言葉は知らなかったし、使っていない。(報道によって)愛する日本の国民に誤解されたままでいるのも不満だったし、難局に立たされている日本に対し、アドバイスもしたかった」
著書では、在日米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題や、米軍の被災地支援に関する日米交渉の舞台裏を克明に記している。
たとえば、東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故発生直後、米国が事故処理に提供できる品目リストを示すと、日本政府は「放射能で汚染されたら補償はどうなるのか」「性能はどうか」など、細かい質問状を送ってきたという。
普天間問題では、政権交代後初の首相に就任した鳩山由紀夫氏が突然、「県外移設」を掲げたものの、結局、政権交代前の「名護市辺野古移設」に戻し、沖縄県を無用な混乱に陥らせたエピソードも詳細に描かれている。
■野田首相の指導力見守る
メア氏は、日本の官僚に対し「細かいことを気にするばかり」といえば、日本の政治家にも「政党の枠にとらわれ、現実を直視せずに決断しようとしない」とバッサリ。そのうえで、「一国のリーダーというのはどんな批判を受けても、国民のためになると信じることを自らの指導力で決断しなければいけない」と説いている。
辞任後、国際事業のコンサルティング業務を手がけるワシントンの民間会社に勤めるメア氏。日米関係に対する思い入れは変わっておらず、野田佳彦首相に対し、「超党派で一国の政治を運営しようとする野田首相なら、米国としてもまともな交渉が期待できる。その指導力を見守っていきたい」と期待感を示している。(文:植木裕香子/撮影:矢島康弘/SANKEI EXPRESS)
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■Kevin Maher 1954年、米サウスカロライナ州生まれ。ジョージア大学ロースクール卒業後、81年に米国務省入省。駐日大使館安全保障部副部長、安全保障部長を経て、2006年から3年間、沖縄総領事。09年に国務省日本部長に就任するも、「ゆすり発言」報道で解任。11年4月、国務省を退職し、現在はコンサルティング会社上級顧問。
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