厚生労働省は11日、社会保障と税の一体改革で検討項目とされた年金の支給開始年齢の引き上げについて、4年前倒しするなど3通りの案を示し、社会保障審議会の年金部会に提示した。
厚生年金の年齢引き上げが現在は途中段階にあることから、これに合わせて高齢者雇用対策を見直している経済界や労働団体から強い反発の声が上がった。
2025年度(女性は30年度)までかけて、3年に1歳ずつ厚生年金の支給開始年齢を65歳まで引き上げる現行計画については、2年に1歳ずつに早めて4年前倒しする案を提示。さらに、基礎年金(原則65歳開始)も含め開始を68歳へ段階的に引き上げ、28年度か35年度に実現する案を示した。
併せて、60歳以降も会社で働く人の「在職老齢年金」制度の見直し案も提示。現在、60~64歳は賃金と年金の合計月額が28万円超で年金が減額されるが、基準を65歳以上と同じ46万円超か、60歳代前半の高齢者の平均給与である33万円超に引き上げる案も示した。
今回の年金支給開始年齢の引き上げ案は、少子高齢化の進展に伴い年々増大する社会保障費の伸びを抑制するのが狙いだ。
とはいえ、受給開始が今よりずれ込むことになるため、11日の社会保障審議会年金部会では委員から「老後の生活設計に影響する」と否定的な意見が相次ぐ一方、年金財政の健全化の観点から「期限を決めて議論するべき」と、長期的視野での議論を求める声も。
さらに与党・民主党は、2009年の衆院選マニフェストで示した年金関係の複数の公約をどれも事実上とん挫(ざ)させているのに、突然マニフェストにない支給開始年齢の引き上げに突き進んでいる。実現は相当に困難とみられる。
厚生労働省によると、年金支給開始年齢の引き上げに合わせて、希望者全員が65歳まで働けるのは、31人以上の企業の46・2%(10年調べ)。そのため、支給開始年齢引き上げを求めた年金部会の複数の委員も、支給開始までの雇用延長が前提条件との考えを示した。
既に6月、厚労省の「今後の高年齢者雇用に関する研究会」(座長・清家篤慶応義塾長)は、年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、希望者全員の65歳までの継続雇用を徹底すべきだとする報告書をまとめている。
この結論を踏まえ、厚労省は今後、労働政策審議会で高年齢者雇用安定法改正などの本格検討に入るが、65歳以上の希望者が全員働ける環境が整うのはまだまだ先の話だ。
そのため、11日の年金部会でも「(65歳までの雇用など)前提条件がなく、検討に入る段階にない」(逢見直人・UIゼンセン同盟会長付)、「年金の理屈だけではなく、高齢者雇用と連携して進めるべきだ」(森戸英幸・上智大教授)といった厳しい意見が出た。
そもそも民主党が政権交代を実現できたのは「消えた年金」問題などに国民目線で真(しん)摯(し)に取り組んだからだ。
09年の衆院選マニフェストでも「国民年金、厚生年金、共済年金の一元化と、月額7万円の最低保障年金実現」「消えた年金問題の解決に2年間、集中的に取り組む」「年金通帳の交付」「社会保険庁と国税庁を統合して歳入庁を創設する」といった年金関係の公約をズラリと並べた。
ところが、政権交代から2年過ぎたが、年金一元化は具体案すら見えず、「消えた年金」も約5000万件の未統合記録のうち、回復は1584万件(6月時点)。年金通帳は意識調査の段階で、歳入庁創設計画に至ってはまったく進んでいない。
政治評論家の小林吉弥氏は「これは野田内閣の致命傷になりかねない。いまの経済・社会情勢のなかで、こうした提案をする感覚が信じられない。マニフェストの裏切りも含め、国民の怒りに火がつきかねない状況だ」と話している。
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