高齢者の万引が後を絶たない。群馬県内では右肩上がりで増加し続け、昨年は過去最高となる430人が摘発された。県警によると、生活苦による犯行がある一方、「スリルを味わいたかった」と供述する高齢者もいた。規範意識の低下が一因とみられ、県警では摘発を強化するなど、警戒を強めている。(森本充)
刑事企画課によると、高齢者の万引は平成元年は58人。全万引犯に占める割合はわずか4・0%だった。しかし、年々増加し続け、11年には169人に達した。18年には365人となり全体の2割を超えた。
さらに昨年、430人に膨らみ、万引犯の4人に1人が高齢者という状況になった。今年も8月末現在で、前年同期に比べ15人増、279人となり、増加傾向が続いている。同課は「高齢化社会の到来という理由だけで片付けられない増加ぶりだ」とみている。
犯行の悪質さも際立つ。279人のうち、初犯は222人(前年同期と同じ)だったが、2回目の摘発は25人(前年同期比5人増)、3回目以上の摘発も32人(同10人増)に上った。
同課は「何度も摘発されるケースが出ている。中には理由が判然としない万引もある」と警戒感を強める。
県警が279人の万引理由を調べたところ、生活苦が56件あったが、単純な消費目的も199件に上った。
同課は「現金を持っているにもかかわらず、万引に走る高齢者がいる。たかが万引という規範意識の低下が背景にあるのではないか」と分析している。
高齢者の万引増加は全国的にも同じで、警察庁は昨年10月、万引の被害届の手続きを簡素化。被害を届け出る店側の負担を軽くして、たとえ少額でも積極的な届け出をするよう促した。
県警でも、店側との連携を深め、取締りを強化している。11-20日の10日間に実施される地域安全運動でも万引防止を重点項目に掲げ、高齢者への啓発活動にも力を入れる方針だ。
同課は「万引は窃盗という重大な犯罪であることを認識してもらうために厳しい姿勢で臨む。摘発強化で何とか規範意識を醸成していきたい」としている。