【書評】『流転の子 最後の皇女』本岡典子著

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『流転の子 最後の皇女・愛新覚羅コ生』

一族の有為転変を活写

 昭和7年の建国から昭和20年の消滅まで、わずか13年間存在した幻の帝国「満州」は、栄光なき悲惨の歴史として残る。郷愁は空(むな)しい。

 愛新覚羅コ生(あいしんかくらこせい)(昭和15年生まれ。43年、福永健治と結婚)は、日本軍部のお膳立(ぜんだ)てで結婚した満州国皇帝溥儀(ふぎ)の弟溥傑(ふけつ)と、日本の華族嵯峨(さが)侯爵家の令嬢・浩(ひろ)の次女。中国大陸侵略の野望を担った傀儡(かいらい)国家の切り札とされた政略結婚の落とし子。生後3カ月で母と満州に渡り、5歳にして1年半、流浪、流亡の大惨禍に巻き込まれ、昭和21年、命からがら引き揚げる。

 コ生は「母は父と出会ったそのときから、生涯、深い信頼と尊敬、何物にも代えがたい愛情を持ちつづけたのでございます」と述懐している。

 溥儀、溥傑、浩3人ともに自伝、半生記を遺(のこ)している。本書は、歴史的一族の肉親、唯(ただ)一人の生存者であるコ生の幼時からの過酷な体験、見聞、記憶を、著者が丹念に聞き出している。さらに、日中関係の新証言、資料を駆使して、愛新覚羅一族の有為転変を活写する構成の巧みさで、500ページを一気に読ませる。

 満州国の瓦解(がかい)、ソ連の侵攻、自決の用意、皇帝の弟の立場、日本人狩り。皇后婉容(えんよう)は廃后となり、アヘン中毒で無惨(むざん)な死をとげる。

 国民党軍の追撃で撤退する中共軍とともに、5歳のコ生と母・浩は、監獄列車につめ込まれ、流亡の民となる。

 ソ連軍に拘束されていた溥儀、溥傑は、撫順(ぶじゅん)戦犯管理所へ移送され、「認罪と告発」が始められる。

 周恩来は、中日友好に対する執念をもち、「皇族一同の拘束と保護」を指示、陰ひなたになって一族を守りつづけていた。昭和34年に溥儀、翌年には溥傑が特赦になる。

 溥傑と母子が再会するには16年を要した。コ生は5歳で別れていた。「命さえあれば、よろしいのでございますよ。生きてこそでございます」とコ生は著者に穏やかに微笑(ほほえ)み語っている。

 2歳上の長女慧生(えいせい)は、「学習院生天城山心中」と騒がれた悲劇の主人公である。コ生は学習院女子高等科2年、姉は大学2年、冬の日だった。




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