那覇発羽田行きの全日空機が今月6日夜、浜松市沖の太平洋上空を飛行中に急降下し客室乗務員2人が軽傷を負った重大インシデントで、機体が一時左側に大幅に傾き、ほぼ裏返しの状態となってらせん状に約1900メートル降下していたことが28日、運輸安全委員会の調査で分かった。乗客112人にけがはなかったが、6人が体調不良を訴えていた。運輸安全委員会は大惨事につながる恐れがあった事態を重視し、さらに調査を進める。
重大インシデントの状況は、同日開かれた定例会見で後藤昇弘委員長が明らかにした。後藤委員長は「(機体は)ほとんど背面飛行といえるまでひっくり返った」と指摘した。
運輸安全委がフライトレコーダー(飛行記録装置)を回収して解析したところによると、6日午後10時50分ごろ、トイレのため席を外していた機長がコックピットに戻ってきた際、副操縦士がドアの解錠スイッチと間違えて尾翼にある左右の方向舵(だ)を調整するスイッチを操作した。機体は少し右に傾いた後、左側に最大131・7度傾斜。同時に機首も左に35度下向きとなった。
約1万2500メートル上空を航行中だった機体はらせん状に大きく旋回しながら約30秒間にわたり約1900メートル急降下。右側の主翼が上になり、機体は自らの重力を支えられず、ほぼ裏返しになった。
この際、機内では最大で地上の2・68倍の重力がかかっており、最高速度は国の制限値(マッハ0・82)を超える同0・828に達していたという。副操縦士が機体の体勢を立て直し終えたとき、機首は当初の進行方向とはほぼ反対になっていたとみられる。
乗客にけがなかったことについて、後藤委員長は「深夜のため乗客がシートベルトをして着席しており、重力で体が(シートに)押さえつけられたことが幸いしたのでは。ジェットコースターと同じ原理で遠心力がかかった状態」などと話した。
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