【書評倶楽部】 『光あれ』馳星周著 落語家・桂文珍

AAI Fundさん
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原発の街、夢や希望は?

 3・11から半年も過ぎた。福島の原発事故以来、日本のエネルギー政策も見直しを迫られ、新しい原発はおそらくこの日本では無理ではないかと国民のほとんどが思っている。


安全神話は根底から崩れ、放射性セシウムの除染が一刻も早く求められる今、懸命に現場で事故処理に直接たずさわっている人たちのことを思うと頭が下がる。また、そこで昔、と言ってもつい半年前まで、専門家でもないが、そこを職場としていた人たちは今、どんな日々を送ってらっしゃるのか…。

今回の著者、馳星周(はせせいしゅう)さんは3・11の起こる遥(はる)か前から原発の街で働く人間を描こうと思っておられたそうな。


『光あれ』は、原発がなければ成り立たなくなった街に生まれたサッカー少年、相原徹が普通に高校の同級生と恋をする。初めてのデート、自転車で2人乗りをし、彼女が海が見たいというので港に行ってみた。そこはいつもの港ではなく、一画に人々が集まり、シュプレヒコールが聞こえ、無数の旗や横断幕が風に煽(あお)られていた。原発建設反対の集会だった。


やがて街に原発が建設される。これといった仕事がない街。友達の昌也が言う。「なあ、徹。おれたち、なんでこんな眠たい田舎町に生まれたんやろな。東京とは言わいでも、せめて京都や大阪に生まれてたら、もっと楽しいことに囲まれてたんちゃうか?」「わからんわ、そんなこと、親も選べん言うやろ、それと同じや。生まれ故郷も選べへん」。その故郷でやがて新しい恋もし、普通に結婚し、家庭を持つ。やがて徹も原発で働くようになる。


いつも不安を抱えながら、しかし、そうやって生きるしかないのか。彼らに光は、明日はどんな形で示されるのだろう。夢は、希望はあるのか?

 著者は北海道の出身らしい。関西人の私には方言が原語で出てくるのでオドロイタ! いや、面白い本です。




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