BSデジタル放送が10月から、本格的な多チャンネル放送に衣替えする。NHKと民放キー局系が中心の現行体制から新たにラジオを含む12チャンネルが加わり、来年3月参入する7チャンネルを合わせると計31チャンネルに。新規組はCS並みの専門性が特徴で、期間限定の無料放送などで視聴者獲得に攻勢をかける。(三宅陽子)
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「地上波と同じリモコンで、BSのザッピング(チャンネルを次々と切り替えること)ができるようになるインパクトは大きい」
7日に開かれた多チャンネル放送研究所主催のシンポジウムで、総務省の小笠原陽一衛星・地域放送課長はBS改編についてこう語った。市販テレビの大半がBSチューナーを備えているため、BSアンテナがあれば、CSのような外部機器なしで多チャンネル放送を楽しめるようになる。
CSのスポーツ専門チャンネル「J SPORTS」は、BSで10月に2チャンネル、来年3月からは計4チャンネルを提供する。視聴可能世帯数は5月末で約771万だが、「BS進出で3割ほど増える」と笹島一樹社長。生中継の強化を打ち出し、来年は今年(約5280時間)を上回る約6000時間を予定する。
現行で有料1チャンネルの「WOWOW」は、10月からプライム、ライブ、シネマの3チャンネル体制へ移行。年間約800タイトルの映画をはじめ「世界のエンターテインメントに出合える場」を掲げ、「第2の創業」と位置づける。
このほか、3チャンネル全てが映画専門の「スター・チャンネル」、全米で注目を集める音楽オーディション番組「Xファクター」などF1層(20~34歳女性)を意識した海外作品をそろえる「FOXbs238」もBSに登場する。
新チャンネルの大半が有料放送だが、「BSスカパー!」とFOXbs238は1年間の無料放送キャンペーンを実施。J SPORTSも1~7日に4チャンネルを無料に、アニメ専門の「BSアニマックス」も1日から10日間を無料とするなど、各局とも視聴者獲得策を打ち出している。
競争の激化も予想されるが、前出のシンポで情報通信総合研究所の志村一●主任研究員は「新BSはコンテンツの単なる“輸入マーケット”となるのではなく、作品を輸出し、海外で稼いだ資金を基に新しい作品を生み出していく“プラットホーム”となってほしい」と願いを込めた。
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【用語解説】BSデジタル放送
放送衛星を使った放送。日本では平成12年12月1日に開始し、地上波に先駆けてハイビジョンなどの高機能放送を実現。9月現在でテレビ12チャンネルがあり、民放キー局系5局は広告収入による無料放送を行っている。10月から増える新チャンネルは、7月24日に停波したBSアナログ放送の帯域などを利用する。