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娘を救え、資産家が80億円とウォール街の知恵総動員

9月7日(ブルームバーグ):ゴールドマン・サックス・グループのパートナーだったディナカー・シン氏は2001年に、1歳7カ月の娘、アリヤちゃんが脊髄性筋萎縮症(SMA)という遺伝性疾患にかかっていることを知った。筋肉を動かす神経細胞を徐々にむしばむ難病だ。治療方法も進行を止める手段もない。さらに、病気の原因となる遺伝子が最近発見されたにもかかわらず、医薬品業界ではこれまでほとんど研究が行われていなかったと、同氏は振り返る。

  ニューヨークのヘッジファンド、TPGアクソン・キャピタル・マネジメント(運用資産81億ドル=約6200億円)を創業したシン氏(42)は「治療法が開発されてもアリヤを救うには遅過ぎるのではないかと恐れた」と語る。「25年後になって、科学的な知識は存在するのに開発に誰も取り組まないから薬ができていないという事態は避けたいと思った」という。

  04年にゴールドマンを退社した同氏は1億ドル近い私財を投じ、脊髄性筋萎縮症財団を設立した。娘を救う薬が発見され開発されることを期待している。アリヤちゃんを含め、米国には2万5000人のSMA患者がいる。重い症状の子供たちは数年で命を落とすことが多い。軽いケースでは支援を受けながら通常の寿命を全うすることができる。11歳で6年生になったばかりのアリヤちゃんは車椅子を使っている。

  シン氏の財団は前進している。スイスの製薬会社ノバルティスと提携し、早ければ2013年に新薬の臨床試験にこぎ着けられるかもしれない。ノバルティスの研究開発責任者マーク・フィッシュマン氏が明らかにした。財団はまた、SMAにかかったマウスの寿命を延ばす薬を開発したPTCセラピューティクス(米ニュージャージー州サウスプレーンフィールド)に1300万ドルを出資した。

  臨床試験に参加も

  イシス・ファーマシューティカルズ(米カリフォルニア州カールスバッド)による注射薬の開発につながる研究にも資金を出した。この治療法は年内に臨床試験に入る可能性がある。シン氏はこの臨床試験が他の療法よりも先に始まればアリヤちゃんを参加させるつもりだ。

  アリヤちゃんがSMAと診断されて以来の主治医、コロンビア大学メディカル・センター(ニューヨーク)小児神経科のダリル・デビボ医師は「SMA財団は研究を、動きの遅い活動から高速の取り組みに変えた」と話した。

  医療研究の遅れ、あるいは研究が全く行われていないことにいら立ち、深刻な病気にかかった子供を持つ少数の裕福な親たちは治療薬の開発に巨額の私財を投じている。この中にはヘッジファンド運用者やプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資家、起業家ら、ウォール街で財を成した人が多い。

            仕事の原理応用

  彼らは「複雑な作業を管理し、投資して良い結果を待つ」という仕事上の原理を新たな取り組みにも適用していると語るのは、非営利団体の専門紙クロニクル・オブ・フィランソロピーの編集者、ステーシー・パーマー氏だ。「企業幹部は市場の仕組みをよく知っていて、厳しい質問を投げ掛け始めた。彼らの目標は、システムを変え開発進展を遅らせている要素を取り除くことだ」という。

  シン氏のような後援者らは医薬品開発の初期段階に直接かかわる。企業による薬品製造やベンチャー企業の資金確保を後押ししたい考えだ。多くの場合あまり知られていない疾病についての基礎研究にまず注目し、研究を前進させる。研究資金を渡してあとは任せきりにするのではなく、関与を続ける。専門家を雇い研究者らが競争よりも協力するように働き掛けるのだ。「たくさんのシャベルと地図を準備し必要な備品を用意し、SMA治療薬を求める宝探しをやりやすくする」とシン氏は説明した。要するに「企業にとってのハードルを低くし、安価で気軽に何かがありそうだという気持ちを抱けるようにする」ということだ。

              お手伝い

  アリヤちゃんも手伝っている。北側にニューヨークのセントラルパークを見渡すマンションの11階の部屋で、SMAの研究資金を集めるために手作りのお菓子のバザーを開くのを楽しみにしているとアリヤちゃんは話した。呼吸器の感染が悪くなっていないことを確認するため予防的に検査を受け、自宅に戻ったばかりで、せきをするアリヤちゃんの背中を母親のローレン・エンさんが軽くたたいている。アリヤちゃんは弟や妹と遊ぶために車椅子で飛んでいった。

  アリヤちゃんは自分の病気やそれを克服するための闘いについてよく分かっているが、それについて話したがらないとシン氏は語った。アリヤちゃんはしばしば両親に、自分が大人になってからのことを話し、どうして自分が病気になったのかと尋ねるという。「これがいったいどういうことなのかを理解するのが、今はとても大変なことだ」とシン氏は言う。

  去年学校で出されたエジプトの神話についての宿題で「病気の女神」を考え出したアリヤちゃんは、「女神様は病気の治療法を考えて、人間の心に治療法のヒントを吹き込みます」と書いている。「顔と手は子犬で体は人間です。女神様はいつも治療法のことを考えています」と作文には綴られている。

  エンさんは娘の作文をノバルティスのフィッシュマン氏に送った。「こういうのが一番響く」と同氏は述べ、「こういう無心な感謝こそ、研究者への最高のご褒美だ」と語った。(ロバート・ラングレス、アレックス・ナスボーム)

(ラングレス、ナスボーム両氏はブルームバーグ・ニュースの医療関連記者です)

3件のコメントがあります
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    違う目線で見ると、資産家の子供が難病にでもかからない限り、こういう研究の大幅な前進はなかなか望み難いということなんでしょうか?
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    yoc1234さん
    2011/9/8 07:57

    おはようございます。

     

    医療の進歩は古代から宮廷で行われ、医学の進歩や、科学の進歩に貢献しました。

     

    教会や国王から資産家にパトロンが移っただけで、古来から権力者が医療などを支えるのは当然でしょう。

     

    でも、この子の話を聞くと思わず涙が出ます。

     

    いい経営者になるでしょうね。

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    faichiさん
    2011/9/9 21:28

    こんな経営者になりたいですね。

     

    「小さな命が呼ぶとき」 ジータ・アナンド著 

     

    これも実話で同じような内容です。

     

    お勧めです。私たち投資家として、本当に人のために

    投資をしていかなければという気持ちにさせられます。

     

     

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