【書評】 『バチカンの聖と俗』 上野景文著

AAI Fundさん
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著者は平成18年から4年間、駐バチカン大使を務めた。それまで温めていた文明論、宗教論を、バチカンの宗教者に投げかける。そこから見えてきたものを、きれいに分類して提示したのが本書である。

 バチカンそのものを論じた第I部では、バチカンの苦悩、妥協、保守性があぶり出され、バチカンが国際社会の中で大きな影響力を持っていることが分かる。第II部ではバチカンを通してカトリック各国はもちろんのこと、イスラム社会、ユダヤ社会の現状や問題点などが浮き彫りになる。

 宗教という要素を無視しては外交が成り立たないと著者は強調する。日本の外交の在り方にも一石を投じている。
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