【書評】『戦国武将の美学』北影雄幸著

AAI Fundさん
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涼やかに、誇り高く生きた人々

 著者、北影雄幸(ゆうこう)氏は東京・四谷のご出身で、幼い頃、いま防衛省のある市ケ谷駐屯地周辺が遊び場だったそうです。3月、東日本を襲った大震災に関する報道で、救援活動に向かう自衛隊員を乗せたジープと、それを道端で神様のように拝む1人のおばあさんの姿を見た北影氏は、大学在学中に起きた「三島由紀夫事件」以来の強い衝撃を受けたと語っておられます。幼い頃、身近にいたあの駐屯地のお兄さん・お姉さんが未曽有の災害に立ち向かい、遺体捜索などの過酷な任務に黙々と従事している-隊員たちの、艱難(かんなん)辛苦に冷静に対処する不屈の精神、強い責任感と自己犠牲の精神に、武士道に通じる精神を感じられたそうです。

 本書は家康、秀吉、信長ら誰もが知っている大名たちから、「乱世の猛将、治世の名君」とたたえられた福山藩主・水野勝成、東軍方・福島正則配下の剛勇の士、可児(かに)才蔵といった武将まで、戦国を生きた240人の言葉を紹介しています。1ページに1つ、印象的な言葉を挙げ解説する形式ですので、どこからでも気軽に読んでお楽しみいただける内容ですが、酷烈な世にあってなお、涼やかに、誇り高く生きた人々の姿が通読することで自然と立ち上がってきます。功成り名を遂げ栄光のうちに天寿を全うした者は少なく、多くの武将が志半ばで斃(たお)れていますので、何か「成功」するためのヒントが本書にあるわけではありません。ただし、それを超える何か、心の糧に成りうるものがお伝えできるであろうと確信しています。(
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