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swq*k3*8さん
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【社説】米国債格下げで目を覚ます米国民
  • 2011年 8月 10日 21:27 JST










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 米株が急落していたとき、昔の同僚が電子メールを送ってきた。そこにはこうあった。「オバマ政権は火災警報器を解除しようとするのはやめて火を消す努力を始めたほうがいい」

 



Reuters

オバマ大統領


 もっともな助言だが、だからといってオバマ大統領が8日午後のホワイトハウスでの演説でこの助言に従ったわけではない。それどころか、大統領は着火剤をまいてしまった。スタンダード&プアーズ(S&P)による米国債の格下げをめぐり、責任を共和党や当の格付け会社に押し付ける一方で、民主、共和両党は協力しなければならなかったと抗議の声を上げたのだ。その上、増税を後回しにして財政支出を行なえば、米国経済は活気を取り戻し、国の財政状況も改善すると、いつもの主張を繰り返した。

 

 ダウ工業株30種平均は即座に下げを加速、さらに数百ポイント下げて、結局、前週末比5.5%安で引けた。株式市場には険悪なムードが漂った。米国債の格下げは心理的な衝撃、屈辱をもたらした。当然、市場には試練が待ち受けているだろう。

 

 しかし、日々の混乱から距離を置いて、大局的に考えることも重要だ。すなわち、S&Pや中国などの指摘とは裏腹に、米国の債務問題は米国の政治的な「機能不全」を示すものではない。米国民がついに問題を理解し、正し始めていることを示しているのだ。民主主義が必ずそうであるように、その過程は混乱に満ちたものになるだろう。しかし、格下げをめぐり起きている言い争いは進展の兆しである。

 

 私たちがどのようにしてこの岐路にたどり着いたかを思い出そう。誰もが終わってほしくないと思っていた数年間にわたる信用拡大は2008年に突然、金融危機に発展した。当時、政権の座にあった共和党は何の説明もしなかったため、有権者は危機にあって一番冷静に見えた大統領候補を支持した。バラク・オバマ氏はそれほど有名ではなかったが、少なくとも「希望と変化」を約束した。

 

 オバマ氏は大統領就任後直ちに、金融パニックを終わらせるという名目でありとあらゆる経済・社会政策を惜しみなく打ち出した。民主党は、ペロシ議長率いる下院と60議席を確保した上院での圧倒的優勢をテコに、同党が40年間、温めてきた政策を実行した。それが大統領自身の信念に基づくものであったかどうかは分からないが、それを認めたのは大統領である。

 

 民主党は政策を実現した。民間の信用バブルの影響からようやく脱しつつあった経済に対し、民主党は何兆ドルもの財政出動を行ない、債務を膨らませた。金融システムが混乱をきたすなか、民主党は金融パニックを引き起こしたとして銀行を厳しく非難し、2000ページにもわたる新たな規則を課した。また、公的医療保険制度の導入を目指し、2年をかけて米国経済の6分の1を占める医療費の改革を行なった。規制当局にはエネルギーや労働に関する法律の改正を急がせた。

 

 マーケット用語を使って言えば、これは米国の歴史において最も大胆な政治的な賭けの一つであった。後年の増税で賭けを賄えると想定して、国家のバランスシートを膨張させた。しかし、企業と消費者は政治家のシナリオ通りには踊らず、約束された景気回復は実現しなかった。その後、茶会党の躍進と、2010年中間選挙の民主党敗北で、それまでのクレジットカード三昧は終わりを迎えることになる。

 

 国民は昨年1年間の混乱を通じて自らの身に何か起きたのかを徐々把握し始めた。国民と金融市場は過去3年間、政府に課せられてきた政策がうまく機能していないとの結論を下しつつある。この気づきは当然、痛みを伴うものだ。

 

 国民は2008年に冷静な人物だと思って選出したオバマ大統領についても結論を出しつつある。おそらく、オバマ大統領は国民が期待していたような指導者ではない。有権者は通常、そんな判断は下したがらないものだ。大統領職にある人物には成功してほしいと願っている。有権者は大統領の成功を米国の成功と重ね合わせているのだ。だからこそ有権者は、中間選挙で厳しい判断を下したあとでも大統領に方向転換する機会を与えている。クリントン政権の時もそうだった。

 

 しかし、オバマ大統領は政治状況や国民のムードの変化に適応できなかった。オバマ大統領は過ちを認めるにしても、容易には認めない。

 

 オバマ大統領の先週と8日の発言が示すとおり、大統領の経済政策は代わり映えしない。雇用創出を図るという名目で失業手当の拡大を求め、失業率が上昇するなかで給与税減税の延長を求めている。通商法案については、2年前に成立させることができたし、そうすべきだった。債務削減については増税にこだわった。

 

 オバマ大統領は「バランスのとれた」債務削減案を支持するとしながら、社会保障や高齢医療保険(メディケア)についてはほんの一部をいじることしか認めていない。成立直後よりも不人気となっている医療保険制度(「オバマケア」と呼ばれている)については議論することさえ拒否している。何百万という米国民の目には、オバマ大統領が落ち着いているのはイデオロギー的に頑固で、政治的に孤立しているからだと映り始めている。

 

 国民の認識が変化したということは、米国のシステムが過ちを正し始めたということである。S&Pとは違い、私たちは怒鳴り合いを歓迎する。債務負担が増え続けても国民が何も言わず、政治家の決まり文句を受け入れている方がはるかに心配だ。日本はそんなふうに20年にもわたる停滞を甘受してきた。

 

 米国債の格下げが騒がれ、市場が混乱したのは、米国民は黙って経済的衰退を受け入れるつもりはないというしるしだ。有名な言い回しに倣えば、「債務危機から学ばないことほど無駄なことはない」。


 

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