ECBの追加国債買い入れは危険なビジネス
- 2011年 8月 8日 13:51 JST
【フランクフルト】欧州中央銀行(ECB)が債務危機収束に向け大量のスペインおよびイタリア国債を買い入れるかどうかの決定は、自らの2兆ユーロ(約224兆円)のバランスシートに長く影響を及ぼす可能性がある。
ECBはギリシャ、アイルランド、ポルトガルの国債を購入し、問題銀行から融資の担保として受け入れることにより、既にリスクを抱えている。
自らのバランスシートが抱えるこうしたリスクを認識したECBは昨年、資本金を100億ユーロ強に倍増した。
スペインとイタリアの国債市場の規模からすると、ECBが影響を及ぼすには数千億ユーロ相当の両国国債買い入れが必要になりかねないと試算するエコノミストもいる。
ロンドンを拠点とするシンクタンクのオープン・ヨーロッパは最近の調査で、ECBが追加的なリスクへの対応を誤る可能性を示唆。ECBはギリシャに対するエクスポージャーが大きいことなどから、保有する資産の価値が4.25%下がっただけで「資本がすべて吹き飛ぶ」としている。
ECBの財政はそれより安全だと当局者は強調する。保有資産の未実現利益とユーロ発行益を考慮に入れた場合はなおさらだという。
買い入れプログラムが始まった2010年5月以来、償還はごく一部にとどまっていることから、ECBは現在バランスシートに、アイルランド、ポルトガル、ギリシャの周辺3カ国の国債750億ユーロ弱を抱えている。イタリアだけで公的債務残高が1兆8000億ユーロ前後あり、ECBがイタリアとスペインの国債利回りの一段の上昇を避けようとすれば、既に購入した金額を優に上回る額の購入が必要になることが示唆される。
スペインとイタリアは、他のリスク国に比べずっと安全な投資先であり、ECBが保有先に追加した場合でもバランスシートの保護になるとみられる。
ECBに損失が出るのは、融資先の銀行が破綻し、その銀行から担保として受け入れていた資産の価値が下がるという、2つのことが起きたときだ。
このことは先月、ギリシャに対する追加救済で民間部門を関与させる計画について、同国国債が選択的デフォルトとみなされる公算が大きいことが明らかになったときにリスクとして浮上した。ECBは、デフォルトしたギリシャ国債を担保として保持しなくてはならない場合にユーロ加盟国政府がECBに対する保証を提供すると強調することで、ギリシャ、そして自らのバランスシートを保護した。
ユーロ加盟国政府がECBの財政を守る最も簡単な方法は、欧州の救済基金が流通市場で国債を購入する計画を早急に承認することだ。
それにより、ECBは国債買い入れビジネスから脱却でき、リスクはユーロ加盟国政府のバランスシートに移行する。