【書評】 『密売人』 佐々木譲著 濃密な人間ドラマ描く

AAI Fundさん
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■濃密な人間ドラマ描く

 10月下旬の北海道で、ほぼ同時期に3つの死体が発見された。函館の病院にて為田俊平の転落死体、釧路の漁港にて飯森周の水死体、小樽の湖畔にて赤松淳一の焼死体。それぞれの事件は個々に捜査が行われ、津久井卓巡査は小樽の事件を追っていた。

 一方、札幌大通署生活安全課所属の小島百合巡査は、登校途中の女子児童が連れ去られた一件に、不穏な胸騒ぎを感じていた。

 3カ所で起こった殺人と小島の話から、次に自分の協力者(エス)が殺人の狙いになると直感した佐伯宏一警部補は、一人、裏捜査を始めるのだが…。

 おなじみの佐伯宏一、小島百合、津久井卓、新宮昌樹はもちろんのこと、今回は機動捜査隊の長正寺武史警部の活躍が見どころとなっています。

 1作目の『笑う警官』は一昨年、映画化もされており、『巡査の休日』は今年、テレビドラマ化も予定されています。

 2作目の『警察庁から来た男』、3作目の『警官の紋章』、4作目の『巡査の休日』(それぞれハルキ文庫)を合わせると、すでに累計200万部を超えるベストセラーとなっています。

 このシリーズは全て書き下ろしで刊行されてきました。単なる刑事もののミステリーにとどまらず、リアルな警察組織や濃密な人間ドラマが描かれており、それが多くの読者からの支持につながっているのだと思います。

 シリーズは全10巻を予定しています。これからの作品もご期待ください。
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