【食品】「もう安全といえる状況にない」 ブランド牛も注文1割減、牛肉全般に消費者
消費者の買い控え傾向が強まるのに伴い市場の競り価格も低迷。消費者の「牛肉離れ」も懸念され、一部小売店では、全頭検査の実施も決めるなど“自衛策”を練りはじめている。
■困難な全頭検査
全国のブランド牛の素牛(もとうし)ともなっている但馬牛の本場、
兵庫県北部の美方郡(香美、新温泉両町)の畜産農家、中村文吾さん(36)は
「兵庫県では東北や関東地域の稲わらは使われていないから、神戸牛や但馬牛など県産の牛肉には何ら問題ない」と話す。
一方で、但馬牛肉の直販店も経営する別の畜産農家(56)は、汚染稲わら問題が盛んに報道された20日過ぎからインターネットでの注文が減ったといい、
「お中元で一番注文が多いときなのに、昨年と比べ1割減」と述べ、消費者の“牛肉離れ”に 諦め顔だ。
松阪牛の産地・三重県では21日、同県大紀町の生産農家が宮城県登米(とめ)市の汚染稲わらを与えた松阪牛を、津市の精肉店に出荷していたことが判明。
県は店に残っていた肉の検査で食品衛生法の暫定基準値以下だったことを確認したが、
汚染が松阪牛に及んだことに関係者はショックを受けた。
松阪牛の生産農家が求めるのは、飛騨牛を守るため隣県の岐阜県が踏み切ろうとしている全頭検査だ。
だが、三重県の場合、放射性セシウムを検査する機器が、県保健環境研究所と民間調査機関にあるだけで、県環境保全事業団が8月初めに購入予定のものを含めても3台のみ。
松阪牛を含め年間に処理されるのは約1万4千頭に上り、県では「1台で1日6頭しか検査できず、全頭検査はとても無理」としている。
■15%売り上げ減
大手スーパー「ライフコーポレーション」(本社・大阪市東淀川区)では、福島県外でも汚染された稲わらを牛に与えていた実態が明らかになって以降、近畿圏の店舗でも牛肉の売り上げが前年同期比で15%程度落ちた。
「全国に流通していることが判明し、関西でも不安に思うお客さまが買い控えに走ったのでは」と同社はみる。
「イオン」(本社・千葉市)でも、問題となった牛の移動履歴を把握する「個体識別番号」を、
売り場や店舗の入り口に掲示するなど対応に追われた。
消費者からの不安の声もあり、「今後も、牛肉から放射性セシウムが検出されていなくても、問題の稲わらが与えられた牛肉が販売されたと判明した段階で情報を開示していく」としている。
■「収束点見えぬ」
影響は小売店だけにとどまらない。食肉の流通・消費に関する調査研究を行う財団法人
「日本食肉消費総合センター」によると、東京都中央卸売市場食肉市場の牛肉の競り価格が、問題発覚後、約4割値下がりするなど、市場段階でも影響が出ている。
同センターは「産地などに関係なく、牛肉全般に対する消費者心理が冷え込みつつある」と懸念を示し、「問題の牛が数日おきに次々と判明する現状では、誰も『もう安全』といえる状況にない。
いつまでこの状態が続くのか、まだ収束点は見えていない」と話す。
こうした中、リスク回避に向けた“自衛策”も進んでいる。
イオンは28日から、関東地区で展開する「イオン」「マックスバリュ」のほぼ全店舗の計115店舗で、全頭検査を実施した自社ブランド「トップバリュ国産黒毛和牛」の販売を始める。9月をめどに、全国約千店舗でも、検査を実施済みの牛肉販売を開始する。
またライフコーポレーションは、自社の物流センターに、放射線測定器を導入することを検討中だ。
影響は小売店だけにとどまらない。食肉の流通・消費に関する調査研究を行う財団法人
「日本食肉消費総合センター」によると、東京都中央卸売市場食肉市場の牛肉の競り価格が、問題発覚後、約4割値下がりするなど、市場段階でも影響が出ている。
同センターは「産地などに関係なく、牛肉全般に対する消費者心理が冷え込みつつある」と懸念を示し、「問題の牛が数日おきに次々と判明する現状では、誰も『もう安全』といえる状況にない。
いつまでこの状態が続くのか、まだ収束点は見えていない」と話す。
こうした中、リスク回避に向けた“自衛策”も進んでいる。
イオンは28日から、関東地区で展開する「イオン」「マックスバリュ」のほぼ全店舗の計115店舗で、全頭検査を実施した自社ブランド「トップバリュ国産黒毛和牛」の販売を始める。9月をめどに、全国約千店舗でも、検査を実施済みの牛肉販売を開始する。
またライフコーポレーションは、自社の物流センターに、放射線測定器を導入することを検討中だ。