■国を担う頭脳集団の正体
深夜にもかかわらず煌々(こうこう)と明かりがともる霞が関界隈(かいわい)。「なんだかんだいっても、やっぱり官僚はたいへんだなぁ」-そう感じたことはないだろうか。
「日本最高の頭脳集団」がこれほど働いているにもかかわらず、日本の未来には希望の灯火すら見出せない。いっこうに上向かない日本経済、権力闘争に明け暮れる永田町、それに加えての大震災と原発事故。
そもそも、この頭脳集団はふだん何を考え、何をやっているのか。どうして日本はよくならないのか。
「霞が関は人材の墓場」
それが著者の答えだった。これはいったい何を意味しているのだろう…。
新聞報道にもあったが、著者は6月末、経産省の事務次官から一方的に「退職勧奨」を申し渡された。
切迫した状況下で校了を迎えようとしていた本書に著者は「あとがきを書き終えたあとで」と題した小文を最後に寄せてくれた。
「役所にいようがいまいが、日本人であることに変わりはない。いままでどおり、次代を担う若者たちが活躍できる舞台を整えるべく、どこにいても力を尽くしていきたいと思う」
自身の決意表明であると同時に、志を残した有望な若手官僚たちへの叱咤(しった)激励に聞こえなくもない。
だらしない政治家たちの姿は嫌と言うほど見聞きするが、血税を払う代わりに私たちがこの国の制度設計を託した官僚たちの正体を、その責任を本書でしっかりと焼きつけてほしい。
このままでは、この国は終わる-著者の危機感を多くの読者に共有してもらいたい。