【書評】『草の花 俳風三麗花』三田完著

AAI Fundさん
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満州国に咲き乱れたロマン


 読み終わって、あらためて満州国の奇妙な魅力を痛感せずにはいられなかった。

 日本の傀儡(かいらい)政権として生み出され、たかだか13年の命しかなかった満州国だったが、その「新天地」には何と多彩な快人・怪人たちの野望や夢が入り乱れていたことだろう。

 中でも二大スターと呼ぶべきは悪名高き「甘粕(あまかす)事件」の首謀者と目された甘粕正彦と、「男装の麗人」「東洋のマタ・ハリ」と呼ばれた川島芳子だ(ベルナルド・ベルトルッチ監督の映画「ラストエンペラー」では、甘粕を坂本龍一が、川島を中国人女優が演じていた)。

 『草の花 俳風三麗花』は句会友だちの女三人の人生が、それぞれの形で満州国の運命と交錯してゆく物語だ。

 タイトルの「草の花」自体が秋の季語であって、物語の中に四季おりおりの俳句が織り込まれている。と言うと日本的な慎(つつ)ましく地味な小説のように思われるだろうが、何しろ満州国が大きく絡んでいるので、スケールが大きく、派手で、ドラマチックな味わいもたっぷりとあるのだ。

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