【話題の本】『東京の喫茶店 琥珀色のしずく77滴』川口葉子著

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■確固たるポリシーの昭和の“遺産”

 安くて気軽に入れる明るいカフェが人気だが、30、40年前は、喫茶店が華やかな時代だった。座り心地のいいゆったりした椅子。テレビがあり、夏の高校野球が始まれば多くのサラリーマンが集まっていた。もちろん喫煙は当たり前で、紫煙が漂っていた。酒を出さない純喫茶なる店もあり、まさに昭和の“遺産”といっていい。

 しかし、少なくなったとはいえ昔ながらの喫茶店も健在。そこに焦点を当てたのが本書だ。

 都内にある77店を紹介。写真を見ていると、店の多くが薄暗い。中には全体がすすけた感じの店もあり、決してきれいではないが味があり、居心地はよさそうだ。

 「喫茶店の総本山」と著者が記す東京・神田神保町あたりの喫茶店といえば、かつては作家が原稿を書き、学生が本を読み、サラリーマンが待ち合わせに使うなどゆったりと過ごせる場だった。著者は「新聞を読むおじさま衆こそ喫茶店の風物詩」と記す。

 飲み物や食べ物のメニューも豊富だが、家族経営でおおざっぱ。効率的な経営をしていないため、コーヒーや食べ物の値段はちょっと高め。それゆえいまでは外資の清潔なカフェに敗れてどんどん街から姿を消していった。





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