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サボりすぎた 借り物


【コラム】IMFはどこまで離れ業を続けることができるのか





 どうやら最後に目をつぶるのは国際通貨基金(IMF)のようだ。ギリシャ政府の資金が来月底をつく前に、IMFはギリシャ救済のため、次回の120億ユーロ(約1兆3800億円)の融資実行を認める見通しだ。その結果、少なくとも1、2カ月はギリシャの償還危機は回避できることになる。



AFP/Getty Images

国際通貨基金(ワシントン)


 そもそも、問題がここまで深刻化したのは、ギリシャの資金繰りに関してIMFが懸念を深めたためだ。昨年、ユーロ圏加盟国とIMFは1100億ユーロ(約12兆5000億円)の救済支援を実行したが、ギリシャ政府が債券市場で資金調達できる見込みはなく、予算削減目標も達成できていないことから、ギリシャの資金繰りが2013年まで続かないことはここしばらく明らかだった。

 IMFが介入し、これ以上救済資金を融資するには、向こう1年間、ギリシャの資金繰りを確保する必要があると各国政府に通知するまでは、資金不足問題は今年後半まで棚上げにすることも可能だった。ギリシャの資金繰りを確保するためには、ドイツをはじめ、ユーロ圏加盟国がギリシャに追加支援を行うことを確約する必要がある。

 ドイツとそれに協調する国はギリシャが必要とする金額を全額支援することには反対した。IMFの推定によるとギリシャが向こう3年間で必要とする金額は1450億ユーロに達し、うち640億ユーロは再び、2014年半ばに償還期限を迎える国債の返済に充てられることになる。

 ドイツ政府の打ち出した解決策は、民間セクターに国債の償還期限繰り延べを合意させ、第二次救済には民間セクターも「関与」してもらう、というものだった。この提案には欧州中央銀行(ECB)が強く反発した。もろもろの影響に加え、償還期限繰り延べを強制することで、市場が先行き不透明となり、ギリシャの債務不履行(デフォルト)懸念が高まって、世界中の投資家がリスク資産から手を引き、フランスなどを含むユーロ圏の他国に悪影響を与えることを懸念したためだ。

 この対立は今も続いている。双方とも強硬姿勢を崩しておらず、IMFは来月の償還危機を回避するため、ユーロ圏からのギリシャ支援に関する一般声明を受け入れる構えのようだ。直前に反対意見でも出ない限り、理事会は120億ユーロの融資を承認するとみられる。

 だが、それは運命の日を最大でも数カ月先延ばしにするに過ぎず、問題が解決するわけではない。ドイツの民間セクター強制関与案が通ればギリシャは債務不履行となり、ECBとフランスの案が通れば、公的資金による救済額は政治的に非常に際どい水準まで膨れ上がる。そして、救済を受ける側のギリシャでは、国民が我慢の限界を示している。

 しかし、もう一つ忘れてならないのがIMFの存在だ。米国首都ワシントンのHストリートに本部を置くIMFにとって、ギリシャ問題は既に大きな頭痛の種となっている。

 ギリシャ救済にIMFが拠出した300億ユーロという金額は、通常の標準に比べると突出している。同基金からの融資は通常、実質上同基金に拠出している資金の割合であるクオータ(出資割当額)に応じて計算され、各国の経済規模をほぼ反映したものとなる。ギリシャへの融資は、クオータの3000%以上に相当する規模だった。

 この比率は既に、IMFが過去に実行した融資プログラムの約2倍に達し、通常の融資額を大きく上回る。そして今、IMFはギリシャへの第2回の支援に向けた議論に巻き込まれている。ドイツの民間セクター関与案が通るかどうかにもよるが、IMFは900億~1450億ユーロの救済融資を新たに実行しなければならなくなる。第1回の救済で行ったように、IMFが基金の3分の1近くを提供し続けるならば、ギリシャへのIMF融資額は、IMFクオータの6000%に達するだろう。

 各国政府首脳が望めば、IMFはそうするだろう。だが、各国政府首脳はそれを望むだろうか。IMFの規則では、融資の条件として、向こう1年間の資金繰りが確保されていなくてはならない。前述の通り、IMFは既にこの点で譲歩している。

 だが、ギリシャの債務が持続可能であること、つまり、期日通りに全額返済可能で、最終的には減少し始めるとの確認も必要だ。ECB以外の大半のエコノミストは、早晩、投資家がギリシャのツケを払うことになるとみている。こうした見方に反対意見を述べることは既に歪曲だ。事情に通じている人々によれば、IMFの中には、ギリシャ債務が持続可能との前提に関して「深刻な懸念」が生じているという。

 会計事務所大手のアーンスト・アンド・ヤングが16日に発表した新たな経済予測によれば、ギリシャの政府債務は国内総生産(GDP)の170%に達し、利払いだけで歳入の5分の1以上が費やされると予測している。歴史を振り返れば、これだけの債務を抱えながら返済した国もいくつかある。例えば第二次世界大戦後、英国の債務はGDP比200%を超えていた。だが、それは自国通貨による返済だった。

 最後の要因は、欧州政府が世界に披露したドラマだ。欧州各国政府は、IMFが自己資本と信用性をリスクにさらしてユーロ圏のギリシャやその他各国を支援することを期待しているが、自分たちは何をすべきか、まだ分からないでいる。あるIMFの事情に通じる関係者によれば、世界は「欧州からの大きなシグナル」を待っている。


記者: Stephen Fidler  

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