信用取引は危険で、決して近づいてはならないと思っている人は多いと思います。これは、三つある誤解からきています。
信用取引は、コストが掛かるから短期勝負で
信用評価損率は、マイナスが当たり前
信用は、売りができて初めて一人前
第一の誤解(コストが掛かるから短期勝負で)・・・。
確かにお金を借りるわけですから、コストは掛かります。ただそのコストは以外に小さいのです。金利は証券会社によって違いますが、年率2~3%(制度信用取引の場合)といったところで、これ以外にも管理料、名義書換料などの費用が掛かる場合もあります。
信用買いで6ヶ月間持ったときのコストは、そのときの金利にもよりますが、大体借入額の1~2%です。最近では信用取引の手数料を現物より優遇している証券会社も多く、この場合には、1ヶ月程度の保有では現物と変わらないことになります。
信用取引以外で、銀行から金を借りようと思えば、やれ担保だ、保証人だと大変な上、解約制限があり、金利もばかになりません。信用取引の場合では、口座さえ開設しておけば簡単に借りられます。通常、現物株を担保に時価総額の2.5倍程度まで融資が受けられ、その資金で株が買えます。手元資金がないときでも欲しい銘柄が手に入るということは、銘柄の入れ替えにとても有効です。
問題は、コストより短期勝負にあります。
信用取引はコストが掛かるため、値動きのいい株を短期勝負でというのがセオリーですが、私は6ヶ月の期間で信用取引を考えます。6ヶ月後の株価をイメージして(この間にどれだけ上がるかを考えて)、安いうちに信用で買うようにしています。決して明日の値上がりを期待して買いません。
株価の流れと位置を自分なりに納得した上で、銘柄のファンダメンタルを重点に選定して、値動きの少ないときに(出来高の少ないときに)少しずつ買ってゆきます。こうすれば6ヶ月の期日がきても、期日売りの圧力が少ないので容易に売却できます。値動きのいい株を短期勝負でやろうとすると、高値つかみになるか、大きく引かされる危険があります。
第二の誤解(信用評価損率はマイナスが当たり前)・・・。
信用取引は利が乗ったものから決済するため、評価損率はたいていマイナスとされています。私の場合は違います。評価損率は通常プラスで、特別の場合だけマイナスです。
つまり買い付け期間が6ヶ月で、少しくらいの値上がりしても決済しないからです。そのため、たいていの場合含み益を持っています。買った銘柄の選択が悪いか、相場が予想外の暴落になったときだけ、マイナスになります。このときは、期日にやむをえず損切りします。
第三の誤解(信用は売りができて初めて一人前)・・・。
カラ売りも信用取引の利点の一つに挙げられていますが、私は持ち株の売りつなぎには使いますが、下げ相場を前提にした売りはしないことにしています。確かに下げ相場の中で、何もしないで相場の下落をぽかんと見ているのは、あほらしいと感じることは多いのですが。
確かに株を高いときに売り下がったとき買えば、限られた資金を有効に使って、より多くの利益を出すことができます。それでも明日のことは誰にも分かりません。カラ売りはあくまで短期勝負、つまりギャンブルだと割り切って私は近づきません。
空売りのリスクはこれ以外にも、期日が来ても現引きできませんし、銘柄によっては逆日歩が付きます。何よりも怖いのは、買いの場合には最大の損失額は借入金が限度ですが、空売りは損失が無限大になるということです。
以前マーケットウィナーズで、信用取引についての解説をやっていましたが、売りを一番先に取り上げていたのにびっくりしました。いまや信用は売りから入るものと思っておられる方も多いのではと思います。遊びで株をやられるなら結構ですが、全財産を株に預け、「株で生活する」ことを目的としている私の投資法には、カラ売りはありません。
さて、誤解が解けたとしても、信用は危険だから寄り付かないという回答にはならなかったかもしれません。これぞ最大の誤解なのです。
株はやる以上はリスクが伴います。信用でだめなら現物でも同じです。信用取引で確かに損は大きくなるでしょうが、儲けも大きくなるのです。あなたは、信用取引で損を出したのではなく、株の選定、投資の時期で損を出したのです。
それでもまだ危険だと思っておられる人のために、信用取引で気をつけること・・・。
安易に借りてしまい結果的に借り過ぎになることです。これが最大のデメリットといえるのかもしれません。
借り入れ金額は、担保として差し入れている現物株の時価評価額以下に抑えることです。つまりレバレッジは1倍までにします。そして買う銘柄を分散し時間をずらし、銘柄の安値を仕込むことです。こうすれば、信用取引で一番いやな追証にあうことはほとんどありません。
信用取引の保証金は、すべて預けている株券にします。つまり現金を証券会社に預けないということです。現金担保では、預け入れた現金には利息が付かないのに、借り入れた資金には利息が付くという制度上の問題があります。現在のように利息は低いときには問題ありませんが、預金利息が高いときには現金は銀行に預け、預金利息を貰ったほうが有利になります。
高度なテクニックは不要です。信用の解説書を見ると、買い、売り、つなぎ、両建て、とありますが、こんなことを初めからやってはいけません。現物株を担保にして、信用取引(制度信用取引)の信用買いだけで十分です。
6ヶ月の期日があることは、デメリットというよりはメリットと考えたほうがいいと思います。損切りが自動的にできるので、期日はメリットといえそうです。無期限信用取引には、金利が高い上に、この歯止めがありません。
株式投資は時間との勝負です。儲かるときにしっかり儲けて損を少なくする、これが基本です。そのために信用取引を使います。いまや、個人取引の50%以上が信用取引だと新聞は報じています。
信用取引の誤解を解いて、信用取引でもっと儲かるようにしたいものです。