ウマラ氏に4~8ポイント差
6月5日の決選投票が迫るペルー大統領選は、服役中のアルベルト・フジモリ元大統領(72)の長女ケイコ氏(36)が各種世論調査で対立候補の左派の元陸軍中佐オジャンタ・ウマラ氏(48)をリード、世界で初めて日系人父娘が2代にわたって大統領になる可能性が高まっている。一方、逆転を狙うウマラ氏は、選挙戦最終盤での異例の外遊という捨て身の戦術を計画。25日にはケイコ氏の米国人の義父が、2000年にニューヨークで経営する会社の脱税を指摘され、有罪判決を受けていたことが判明し、ケイコ氏が土壇場で足元をすくわれる可能性も残っている。
4月10日に行われた第1回投票での得票率は、1位のウマラ氏が31.6%、2位のケイコ氏が23.5%で、ウマラ氏が約8ポイントリードしていた。ともに貧困層を主な支持基盤にすることから、中間層や白人富裕層からの支持は薄く、昨年ノーベル文学賞を受賞したペルー出身の作家マリオ・バルガス・リョサ氏(75)は「エイズか末期ガン患者の二者択一に等しい」などと問題発言で決選投票を酷評。新聞紙上で論議が巻き起こる一幕もあった。
「父恩赦せず」に好感
支持率でケイコ氏が優位に立ったのは、今月に入ってからだった。「父は無実だと信じているが、法には従う。大統領に当選しても父に恩赦は出さない」「父の治世の強権政治は残念なことだった」「汚職の追及は徹底して行う」などとインタビューで表明。これに好感した中間層の支持を取り込むことに成功したためだ。
対するウマラ氏は、資源ナショナリズム的な発言やベネズエラの反米左翼の急先鋒ウゴ・チャベス大統領(56)との緊密な関係が嫌われ、今月後半以降の各種世論調査では4~8ポイントのリードをケイコ氏に許している。
義父の脱税判明も
現状を打破しようと、ウマラ氏は25日、ブラジルの中道左派ジルマ・ルセフ大統領(63)やルイス・イナシオ・ルラ前大統領(65)と面会するためブラジルを訪問すると表明した。貧困から身を起こして大統領になり、経済発展を軌道に乗せたルラ氏らの人気はペルーでも高く、関係をアピールし、逆転を狙う作戦だ。
また、AP通信は25日、ケイコ氏の夫マーク・ビラネラ氏(34)の父が2000年6月、1992年に3万6400ドル(約300万円)の収入を申告せず約1万1000ドルを脱税したとして、罰金5000ドルなどの判決を受けていたと報じた。これに対してケイコ氏は事実関係を認めた上で、「すでに裁きを受けた古い話なのに、ウマラ氏陣営がリークして仕掛けた“汚い戦争”だ」と批判した。ケイコ氏は米国留学中に夫と知り合い04年に結婚、2人の女児がいる。
ケイコ氏勝利の流れができつつあるが、どちらに投票するか決めかねている中間層や富裕層は多く、最終盤での一つのミスが命取りになる可能性はゼロではない。