「政治リスク」で強気になれない日本株
18日の東京株式市場で、日経平均株価は続伸。大引けは前日比95円高の9662円だった。外国為替市場で円高・ドル安が一服したことを受けて輸出関連銘柄に買いが先行、みずほフィナンシャルグループのみずほ銀行とみずほコーポレート銀行の合併報道をきっかけに、売り込まれていた銀行株にも買い戻しが入った。後場に入って株価指数先物に大口の買いが入り、日経平均は一時126円高まで上げ幅を広げた。
18日の市場で話題になっていたのが、クレディ・スイス証券の先物の手口だ。大阪証券取引所が発表した株価指数先物の手口によると、クレディは17日に日経平均先物を約5000枚売り越しており、「いつ買い戻しが入るのか」が朝方から注目されていた。後場に入って1分間に1000枚単位のまとまった買い物が入り、日経平均先物は午後12時58分に前日比110円高の9690円まで上昇。現物株にも買いが入り、上げ幅を広げた。
だが、日経平均が100円近く値上がりした割には市場の反応は冷静だ。東証1部の売買代金は1兆2429億円と前日より2%強減った。現物株が薄商いの中、先物主導で上昇した面が強く、市場関係者の間で一段高を予想する声は少ない。
決算発表が一巡し、市場では方向感に乏しい展開が続いている。国内外の景気に不透明感があり、「しばらくは底値を探る展開」(楽天投信投資顧問の大島和隆社長)との見方が根強い。証券ジャパンの大谷正之調査情報部長は「日経平均は6月までに9300円程度まで下げる可能性がある」とみている。東日本大震災前は日本株に割安感があり、先高観につながっていたが、「米国株も伸び悩み、商品相場も下げ、割安感はなくなった」(岡三証券の船津典彦エクイティ部長)との声もある。
日本株を買い支えている外国人投資家の買いが続くかどうかにも、懐疑的な見通しが出てきた。外国人投資家は5月の第1週まで27週連続で日本株を買い越し、1996年の最長記録に並んだ。東京証券取引所が発表する投資主体別売買動向の数字に直結する訳ではないが、朝方の外国証券経由の売買動向に市場関係者は注目する。18日は小幅に買い越しとなったものの、ペースはこのところ鈍っている。
もっとも、個別の企業に目を向ければ堅調な業績を材料に買われている銘柄もある。カブドットコム証券の山田勉マーケットアナリストは「震災からの復興ムードに水を差し、株式相場の上昇を妨げているのは政治の混迷に尽きる」と指摘する。「サプライチェーン(供給体制)は回復しつつあり、個別の企業の業績も比較的堅調。株式相場はそれほど弱くなる必要はない」。
政府が東京電力福島第1原子力発電所事故の損害賠償(補償)を支援する枠組みに関して、枝野幸男官房長官が「金融機関が債権放棄をしないと東電への公的資金注入に国民の理解を得られない」との趣旨の発言したことを受けて急落した先週金曜日の相場は記憶に新しい。震災からの回復を目指す企業の努力に水を差すような政治の混迷・停滞が長引けば、外国人投資家の日本株離れを助長しかねない。「政治リスク」が株価の上値を重くしていることは否定できないようだ。