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お化け怖い 借り物
【コラム】景気低迷への不安は、インフレ懸念よりも強い
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多くの製品の価格が上昇しているにも関わらず、投資家のインフレに対する懸念は弱まっているようだ。これは一見、パラドックスのように見える。
確かに、12日の一連の出来事によっては、インフレ懸念は急速に鎮静する可能性がある。
まず、4月の生産者物価指数(卸売ベースでの出荷価格の変動を指数化したもの)は、前年同月比で6.5%近く上昇すると見込まれている。3月の実績は同5.7%上昇だった。そうなると、インフレ強硬派が落ち着きを失いはじめる恐れがある。キャピタル・エコノミクスは、商品価格急騰の影響が浸透する今年の夏には、同指数が8%のピークに達する可能性がある、と指摘する。
しかし今のところ、債券市場はあまり関心がないようだ。米10年国債の利回り(イールド)は現在約3.16%。それとは対照的に、1970年代から80年代初頭の大不況時の利回りは15%を超えていた。
また、12日午後には、米財務省が160億ドルの30年国債の入札を実施する。落札利回りが約4.4%だとすると、前回2月に投資家が入札した4.75%を大きく下回ることになる。このことは、最近の商品価格の急騰でインフレが高進しても、それは一過的なもので終わる、というバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の主張に、投資家が強く賛同していることを示唆している。
もちろん、広範囲のインフレ圧力が突然現実のものになったり、外国人投資家が消えたりすれば、以前にもあったように、市場は利上げという不意打ちを食らうことになる。また、FRBの6000億ドル規模の国債購入プログラムが状況を歪めていることは確かだ。しかし、この1週間の10年国債の利回りが3.2%以下で推移してきたことを考えると、債券市場は、プログラムが終了する6月に最大のバイヤーを失うということを、それほど憂慮しているわけではないようだ。
その一方で、スタンダード・チャータードのエコノミスト、デビッド・シーメンス氏は、ここ数カ月間は雇用拡大ペースが増しているものの、「膨大な数の失業者が依然として賃上げ圧力を押しとどめている」と述べた。
債券市場はインフレに関して無頓着ではないのかもしれないが、FRBの景気刺激プログラムが終了し、景気が再び失速する可能性ほどには憂慮していないのかもしれない。このことは、最近までは、株価の継続的な上昇基調とは相いれないと考えられていた。ところが、過去2週間の商品相場の反落と、11日の株価の急落は、そこでも同様の懸念が表面化しつつあることを示している。
市場で語られるストーリーに、インフレの悪者は登場しない。※景気低迷の亡霊が登場するのである。