百発一中の期待値

LONERさん
LONERさん

百発百中の砲一門は百発一中の砲百門に勝る
これは日本海海戦で有名な東郷平八郎元帥の言葉で、旧日本軍はこの言葉を合言葉に日夜猛訓練に励んでいました。(お互いの砲撃のスピードは考えなくていいのか、砲台の状態は常に一定なのか、など、いろいろとあるのですが、)百発百中というと、即座に、すべての砲撃の命中する確率は同様に確からしく、1/100である、と多くのウェブサイトに書かれています。
では、仕方なく1/100の確率で各砲撃が当たるものとして考えます。多くのウェブサイトでは、100発撃っても一発も当たらない確率が36%もあるから、という感情的な理由で、100発1中なんてありえない、と結んでいます。そりゃそーなります。100発1中を「1/100で各砲撃が当たる」と定義したんですから。
ここでは、1/100で各砲撃が当たる場合に、100発撃ったときの期待値(期待命中数)はどうなるのか、を計算してみます。二項分布を知っている人からすれば、“そんなもの1に決まっているだろう!”となるのですが、ここではそれなりに丁寧にやってみようと思います。
小学生でもわかるレベルで説明しようと思えばできなくもないけど、それなりに手間がかかるので、高校1年生ぐらいのレベルを想定して......
N発の砲撃を撃つとします(上ではN=100)。各砲撃の当たる確率を 1/N としたときの、当たる砲撃の数の期待値を求めます。便宜上、p=1/N, q=1-p とします。
N発のうち、k発が命中する確率は、NCkpkqN-k となります。(N個の中からk個を選ぶのが NCk 通り、特定のk発が命中する確率は pkqN-k。)
ということは、期待値は、
E = ∑ kNCkpkqN-k [k=0~N]
になりますね。(N>0)(0! = 1 とします。別にこれをやらなくてもできますけどね。)
E = ∑ kNCkpkqN-k [k=1~N]
= ∑ k × N! / {k! (N-k)!} pkqN-k [k=1~N]
= ∑ N! / {(k-1)! (N-k)!} pkqN-k [k=1~N]
= N × ∑ (N-1)! / {(k-1)! (N-k)!} pkqN-k [k=1~N]
= N × ∑ (N-1)! / {k! (N-1-k)!} pk+1qN-1-k [k=0~N-1]
= Np × ∑ (N-1)! / {k! (N-1-k)!} pkqN-1-k [k=0~N-1]
(さらに見やすくするために、M=N-1 と置き換えてみる。)
= Np × ∑ M! / {k! (M-k)!} pkqM-k [k=0~M]
(= Np × ∑ MCk pkqM-k [k=0~M])
= Np × (p + q)M
= Np × (p + (1-p))M
= Np × 1M
= Np × 1
= Np
= N(1/N)
= 1
そんなわけで、各砲撃が 1/N の確率で命中する場合に、N発撃ったときの当たる砲撃の数の期待値は 1 となります。期待値まで計算しているウェブサイトが見つからなかったので、計算してみました。
分散は、1-1/N となります。
LONERさんのブログ一覧