先週はFOMCで緩和政策の延長が明らかとなり、これを材料として株式市場は上昇しました。FRBは金融緩和の出口戦略を探っており、市場は近いうちにこのスケジュールが発表されることを織り込んでいたため、ポジティブサプライズとなった格好です。本来緩和政策の延長は企業にとって経営環境の悪い状態が続くという見通しの裏返しですので、株価が上昇するというのはあまり論理的ではありません。しかし、現在起こっている株価上昇自体が緩和政策でばらまかれた資金によって発生しているという背景があり、緩和策の終息による株価の下落が懸念されていました。このため、今回の発表でしばらく緩和政策が続くことが確認されて買いの安心感が生まれたと考えられます。
一方日本市場では昨日ついに1万円の節目を超えてきました。最終的にはビンラディン容疑者死亡の報で押し上げられた形ですが、アナリストの見解や経済レポートを見てみますと、海外市場の上昇につられての上昇というものや震災復興需要への期待から、といった内容が目立ちます。しかし多くのアナリストもなぜ現在の上昇が起こっているのか判断に迷っているようで、中にはこじつけに近いような内容のものも見受けられました。
実際、国内には上昇につながるようなファンダメンタル要因は見あたらず、緩和政策による上昇も、ビンラディン容疑者の死亡も国内要因ではありません。復興需要にしても資金源の多くは政府から出さざるを得ず、これは結果的に税金として国民に返って来るため、経済の根幹である消費活動に影響を与えないとは言い切れません。円安になれば輸出産業が好調になるという経験則がありますが、生産が追いついていない現状においてはこの常識が当てはまらず、特に自動車産業においてはリーマンショックの時よりも状況が厳しいというレポートも存在します。テクニカル的には2009年3月から続くトレンドのアンダーラインで株価がサポートされていると見ることもできますが、そもそもテクニカル要因はファンダメンタルズ要因ほど株価に対して影響力を持ちません。
こういった状況を鑑みますと、現在の日本の株式市場には緩和策で余った資金が(新興国でよく見られるように)投機目的で流れ込んでいるだけであり、自立的な上昇とはほど遠いと考えることができます。このため、金融緩和政策終了によって、アメリカ市場よりも日本市場の株価が急激に反応して大きく下げるというシナリオも十分考えられます。
今週の日本市場は連休で休場が続きますが、水曜日にはアメリカでADP雇用統計が、金曜日には失業率が発表されます。ADPは若干の改善が、失業率は横ばいが予想されています。また、木曜日にはECBが政策金利を発表します。前回状況が良くないにもかかわらず利上げを発表したばかりですので、これ以上金利を上げるとは考えにくい状況です。市場では逆に下げることもないと考えられているようで、現状維持が予想されています。
投機的資金が支配的になっている日本市場は特に指標の内容に敏感に反応する可能性がありますので、予想値との乖離には注意しておきましょう。