先週も日本株は海外市場頼りの材料難相場となりました。5月に入れば3月末締め企業の決算発表が本格化してくるため、これを手がかりにした価格変動も出てくると考えられますが、震災が決算内容に与える影響については様々な見方が考えられます。震災自体が3/11だったため、大手企業の場合は決算にはさほど大きな影響を与えない可能性もあるでしょう。しかし復興にかかる資金をどこかのタイミングで計上しなければならないということに変わりはなく、2010年3月期に計上するのか、2011年3月期になるのか、または複数年に分けるのかで各社の決算内容はかなり違って見えるはずです。
もしファンダメンタルズで投資をするのであれば、地震の特損をいつ計上する予定なのかしっかり調べておくことで相対的に割安な銘柄を見つけることができるかもしれません。2010年3月期に全ての特損を計上する企業は、この期の決算発表は思わしくないことでしょう。つられて株価も下がるはずです。しかし、その後は地震の直接被害による損失を考える必要がありませんので、徐々に株価を戻してくる展開が期待できます。2011年3月期以降にまで震災の特損を計上する企業は、前者の企業に比べて比較的被害が少ないように見えるため、株価はあまり下がらない可能性があります。しかし特損は残り続けることからなかなか業績が回復しないことが予想され、後々の株価動向の見通しはあまり明るくないと考えることができます。
市場の大きな動きは常に何らかの材料に反応して現れますので、その背後にあるものを想像することで利益を得るチャンスをつかむことができるかも知れませんね。
さて、日本市場は材料待ちの状態ですが、欧州、アメリカは予想外に好調となっている各種指標や見通しを受けて上昇が続いています。しかし震災以降何度かこのブログでも書いている通り、積極的に上昇を続けるような大きな材料が続けて出ているようには見えません。ユーロ圏はポルトガルの救済を考えなければなりませんし、ギリシアやスペインも今後どうなるかはわかりません。ギリシア国債の下落は止まらず、利回りで見るとすでに自立再建を断念したポルトガル以上になっています。また、スペイン国債の利回りもポルトガルと同水準まであと僅かです。ほぼ国内の預貯金だけで資金調達(国債の吸収)ができている日本と違い、対外的にこれだけ資金調達コストが上がっている状況では、今後の見通しを明るい方向に立てるのは難しいでしょう。これは同じ通貨を使うユーロ圏全体の問題でもあります。何より、実は欧州復興基金の多くの部分は日本が出資していたという現実もあり、この面でも震災の影響が出てくることは避けられません。
アメリカにしても失業率の改善傾向は好材料とされていますが、現在の失業率はもともと過去にない規模の悪さから若干回復し始めたという状態に過ぎず、先週ダウが直近の最高値を付けた理由にはなりえません。ここまでダウ平均が上昇を続けてこれたのはQE2による大規模なばら撒き政策があったからに他ならないのです。これによる過剰流動性は異常ともいえる状況で、震災後の日本市場にすら数兆円という単位の資金流入がありました。もちろん、ブラジルをはじめとする新興国には昨年を通じてこの資金が流入し続けており、その結果通貨高が引き起こされ、政府が対応に苦慮する状況になっています。
アメリカはまもなくこのQE2を収束させる方向で検討しているという報道が入っています。金余りという異常が収束すること自体はいいことではあるのですが、それによって引き起こされていた雇用や消費が落ち込むことは避けられず、株価は下落のトレンドに転換することが予想されます。
このような各国の状況と、まだ全て見えきっておらず、おそらくは長期化するであろう日本の震災の影響が世界経済をどのような方向に動かすのか、少なくとも楽観をしていい状況ではないと言えるでしょう。
今週の指標は、国内では木曜日に重要なものが集中しています。まずは3月の完全失業率が発表されます。予想では0.2%の悪化ですが、津波の影響が大きかった地域のデータはまだ統計に反映されていない可能性があります。鉱工業生産も同日に予定されていますが、こちらは大幅な下落の前月比-11.1%が予想されています。鉱工業関連施設は津波の影響は大きくありませんでしたが、地震の混乱もあり、大きくずれる可能性もありますので注意が必要です。また、消費者物価指数も水曜日発表です。こちらは前年比0.2%の下落が予想されています。
一方アメリカでは今日からFOMCが始まります。結果が出るのは水曜日で、政策金利は据え置きが予想されていますが、QE2の出口戦略についても議論されるはずですので、議事も確認しておくと良いでしょう。また、今日は2月のケース・シラー住宅価格指数と4月の消費者信頼感指数も発表されます。木曜日には1月~3月のGDPも発表予定で、前年同期比で1.8%の増加が見込まれています。
ユーロ圏では金曜日に指標の発表が集中しています。4月の消費者物価指数と、3月の失業率が特に大きな指標となります。
今週金曜日は日本が休場となりますが、前日発表の国内指標は地震の影響で半ばブラックボックスともいえる状況になっています。内容によっては木曜日の相場が混乱する可能性もありますので気をつけておきましょう。
2件のコメントがあります
1~2件 / 全2件
> ISAC.WaKSさん
コメントありがとうございます。システムトレードはファンダメンタルズを
見ていなくても投資可能ですが、大局観にあったシステムを選択することで
より大きな利益を得ることができます。また、シグナルが出たときにそれを
実行するための心理的なコストを下げる意味もあります。
もしよろしければ来週もまたご覧ください。
今週木曜日にはポジションサイジングについて解説する予定です。
コメントありがとうございます。システムトレードはファンダメンタルズを
見ていなくても投資可能ですが、大局観にあったシステムを選択することで
より大きな利益を得ることができます。また、シグナルが出たときにそれを
実行するための心理的なコストを下げる意味もあります。
もしよろしければ来週もまたご覧ください。
今週木曜日にはポジションサイジングについて解説する予定です。
立派なレポートですね。参考になりました。システムトレードをするにしても世の中の動きは見ていなければなりませんものね。