宗教界では震災直後から、伝統仏教を中心に宗派を超え、いずれも布教活動を抜きにした被災地支援が始まった。
僧侶らが最初に直面したのは、「葬儀ができない」「火葬ができない」「遺体の身元が分からない」といった事態だった。主だった宗派が加盟する全日本仏教会では23日に、各被災地で読経をボランティアでする組織を立ち上げるよう被災県の仏教会に依頼した。「遺族に寄り添うのが宗教者の役割」といった思いからだ。遺体安置所や火葬場などで、自発的に読経ボランティアが立ち上がった所も多かった。
「祈る」「読経する」といった行為は、宗教者ならではのもの。被災地のある僧侶は「読経で肉親を失った悲しみがなくなるわけでもないし、生活が立ち直るわけでもない。しかし、気持ちの整理に少しだけでも寄与できれば」と話す。
他に、各宗派の若手を中心にインターネットで情報をやり取りし、被災地の寺院や避難所に物資を送る活動も活発に展開された。
宗派の垣根を越えた支援活動のため、宗教学者らが中心になった連絡組織も立ち上がった。各宗派の活動をネット上などで公表し、情報交換する。活動の公表によって社会にある宗教への抵抗感や誤解が解ければという思いもあるという。
立正佼成会、創価学会など、多くの新宗教教団も被災地支援に乗り出している。強みの一つが、伝統教団に比べ建築年が新しく強固な施設を多く持っている点だ。震災直後から、信者であるなしを問わず、多くの人が各教団施設に一時避難した。立正佼成会の東北の各施設には約300人が一時避難。避難の長期化に備えて、教団が東京に持つ大規模宿泊施設の貸し出し準備もできている。
有志の信者らでつくるボランティアを派遣したところも多い。例えば、真如苑は「ともに苦しみ、悩む存在でありたい」(広報担当)と、被災地の社会福祉協議会などと連携。延べ2千人超を派遣し、物資補給や炊き出しをしている。一過性でなく、数年単位の支援活動をする覚悟という。