海外株式に簡単に投資する方法には、STAM/eMAXIS/CMAMシリーズ等のオープンエンド型投資信託を用いた方法と、日本の取引所に上場している海外株式に投資するETFを用いる方法があります。
先進国株式指数であるMSCI-KOKUSAIに連動する運用を目指すETFには、上場インデックスファンド海外先進国株式(以下、上場コクETFと書く) とMAXIS海外株式(MSCIコクサイ)上場投信(1550)があります。どちらのETFも信託報酬は年率0.2625%程度です。この水準は、オーブンエンド型投資信託よりも格段に低くなっています。オープンエンド投信で信託報酬最安のCMAM先進国株式インデックスeでさえ年率0.525%です。したがって、長期的にはETFのほうがオーブンエンド型投信よりも成績がよいと考えたくなりますが、実際はそう単純ではないようです。
rennyの備忘録 トラッキング・エラーを調べてみました(2011年3月末) #7
http://renny.jugem.jp/?eid=1923
上記記事によると、先進国株式に投資するファンドの1年間の成績は、上場コクETFは2.07%。STAMとeMAXISはそれぞれ2.42%と2.50%となっています。MAXISのETFは運用を開始してまだ日が浅いですが、運用方法から推測すればeMAXISを上回る成績となるのは確実でしょう。
オーブンエンド投信と比べると 、上場コクETFの成績があまりよくありません。どうしてよくないのか、その理由を有価証券報告書から調べようとしましたが、よくわかりませんでした。
上場コクETFは株式を保有せず、株式先物で運用することでMSCI-KOKUSAI指数に連動することを目指しています。一方、MAXISやオーブンエンド投信は、現物株式を保有しています。この違いが成績に現れているのかもしれません。
そこで、上場コクETF独特のトラッキングエラー要因を考えてみました。
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(1)各国の株価指数の組み合わせでMSCI-KOKUSAI指数連動を目指すことに起因するエラー
そもそも、MSCI-KOKUSAIはS&P500やSTXE 600 等の組み合わせにより表される指数ではない。
(2)先物と短期国債で株価指数連動を目指すことに起因するエラー
先物の期限と短期国債の期限が一致しない。先物参加者のファンディングコストは短期国債よりも高いはず。差し入れ証拠金には十分な利息はつかないのではないか。
(3)株価の変動に伴い、必要な為替予約の量も変動することに起因するエラー
株価が上がれば為替予約の量も増やさなければならないが、細かく調節することはできない。株高+円安や株安+円高のときは、マイナスのトラッキングエラーになる。
※この種の調整は一部の先物のみ当てはまる。上場コクETFには当てはまらない。、
(4)配当が発生しないので、現地で課税されない。
(5)ETFの追加設定のタイミング
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(1)(5)は、プラスにもマイナスにもなりうる。
(2)は、恒常的にマイナス。
(3)は、ほぼマイナス。だが、上場コクETFには関係ない。
(4)は、プラス。現物株式を保有するファンドよりも有利。
(2)は、先物価格に含まれる金利と短期国債・為替予約に含まれる金利の差によるが、0.2%以上はマイナスではないか。
(3)を評価するのは難しいが、CMEの日経225先物の円建てとドル建ての価格差が参考になるかもしれない。だが、上場コクETFには関係ない。
(4)は、配当利回りが2%、実効税率が20%とすると、年率0.4%の差がつく。(2)と(3)によるマイナスが、(4)のプラスよりも大きいのではないか。
というわけで、上場コクETFの成績が振るわないのは単なる偶然ではなく、構造的な理由があると推測します。
同じ理由で、上場インデックスファンド海外新興国株式(1681)も長期保有には向かないと推測します。
まあ、コジツケかもしれませんが。