先週の株式市場はECBの利上げが大きな話題でした。各種メディアでは世界的に景気は上昇を続けており、欧州だけでなくアメリカでもQE2の出口政策を探っていると報道されています。そんな中で日本だけが震災の影響で出遅れ、実際に通貨金利の面では日本円を持っているメリットがあまりない状態となっており、為替市場では円売りの動きが進んでいます。おそらく今週もこの流れを引き継いだ動きとなり、円安に伴って株価が上昇するというシナリオもあり得るかもしれません。
しかし私たちは世界経済の実態が本当に株式市場の想定しているとおりであるか疑問を持っています。先週ツイッターでつぶやいたことの繰り返しになる部分もあるかもしれませんが、まず事実としてECBが利上げをする前日にポルトガルが自立再建を断念しました。もしかしたらこの件を受けてECBは利上げを見送るかもしれないと考えていたのですが、実際には利上げが行われました。通常であればユーロを使う国の一つの経済が破綻したのですから、利上げを行うべきかどうかについてはかなり疑問のある状況だったのではないでしょうか。
また、ユーロ圏はポルトガルだけでなく、スペイン、ギリシア、アイルランドといった国々も抱えています。最近報道で聞かなくなっただけであり、これらの国々も依然として危険な状態であることに変わりはありません。もしかしたらこのうちいくつかの国がユーロからの離脱をしたり、ポルトガルと同じ状態に陥ることも十分考えられます。
さらに、アメリカも失業率の改善といった報道が大きくなされるようになり、景気改善に向けて進んでいるような印象を受けます。しかし、実際のところ現在の失業率は8%台後半というアメリカ史上においても例を見ないほど悪い数値となっており、確かに数ヶ月前の2桁という状況から比べれば改善していると言えるものの、絶対的にみて失業率が改善した状況とはとても言えません。
そこに東日本大震災が発生し、日本の部品生産の一大拠点であった東北を直撃しました。これは国内だけの問題ではなく、世界でも東北でしか作れない部品がかなりあり、そこが機能停止したことでGMやFordといった海外企業でも生産停止の動きが実際に発生しています。この動きは自動車産業だけではなくハイテク産業全般にも及び始めており、今後の世界経済を考える上では大きなマイナス点として考えなければなりません。さらには原発政策の見直しも世界レベルで行われることは必至で、エネルギー産業にも影響を与えることになりそうです。
こういった状況の中では株価上昇はあまり期待できないはずなのですが、不思議なことに地震直後の急落以降先週までの日本株は上昇の動きを続けています。今後この動きがどこまで続いていくのか慎重に見極める必要があると言えるでしょう。