4/5雑感(震災と円安)

MDRさん
MDRさん

震災の後、投機筋から円買いの注文が殺到して円高になりましたが、その後は円安に向かって急激な動きが発生しています。円高となった原因は海外の保険業者が払い戻しのために円を買うという観測や、(震災の大きさがはっきりとわかっておらず)早々に復興需要から円が強くなる、との観測が外国勢にあったためと考えられます。しかしG7の協調介入があり、その後も一時円高に向かって推移する場面はあったものの、ほぼこの介入をきっかけにして円安に向かっての動きが出てきました。円安となっている原因は世界的な景気の回復基調を背景にして、アメリカで緩和政策の出口戦略を練る場面に来ていることと、ユーロ圏では早ければこの4月(7日)にでも利上げが行われるという観測があるためです。
いずれにしても3週間の中で10円近い値動きが出ており、特に為替投資家は巨額の損失を出したか、または莫大な利益を手にしたかの両極端な結果となっていることでしょう。おそらく常時ポジションを持つタイプの投資家やシステムであれば損失を出し、市場の動きを見てから動くタイプの投資スタイルであれば利益を得ることができたのではないかと思います。これは株式市場でも同じでした。
さて、円が安くなれば輸出企業にとって有利となり、震災前までの流れであれば株価が大きく上昇するというシナリオにつながります。しかし現在の日本経済は復興のために円を使って海外からものを買う、という流れの方が強いと考えられます。また、今回の震災で東北の製造工場がダメージを受けており、さらに日本からの荷物には放射性物質が付着しているという懸念が諸外国に広がっているという状況もあり、輸出関連企業であっても思うように製品の輸出ができいない状況にあります。このため今回の円安は直接的に企業の業績に良い影響を与えるとは考えづらく、株式市場にとって必ずしもプラスの材料とはならない可能性が高いと言えます。
今回の震災とは関係無しに考えても、円安というのは自国通貨の価値低下であり、輸出企業にとってみれば業績の面では良いことであっても、日本経済全体で考えれば本来手放しで喜ぶべき材料ではありません。現在の状況を考えるとなおさら今回の円安は歓迎できる状況ではないと言えるでしょう。
今週特に重要な予定は7日に予定されているECBの政策金利発表です。現在為替と株式市場はこのタイミングで0.25の利上げを織り込んで推移しています。このため、この予想値から外れることがあれば上下に大きく振れる可能性がありますので、この発表は必ず確認するようにしてください。
MDRさんのブログ一覧