ポイント
3月30日に経済産業省が発表した2月の鉱工業生産動向を出荷在庫バランスという景気指標を通して見た様子はすでにご報告しました。(「2月の鉱工業生産動向を出荷在庫バランスで読む」)
そこで、今度は在庫循環モメンタムを使って景気動向を確認すると同時に、日経平均株価の今後の動きについて考えてみたいと思います。
在庫循環モメンタムは、経済産業省の数量ベースの指標と、日銀の価格指標を組み合わせて、金額ベースにした出荷と在庫を用いて算出した指標です。
この指標と日経平均株価との連動性は比較的に高く、3月以降の在庫循環モメンタムが大きく下落することを考慮すると、現在は反騰局面にある株価ですが、今後再び調整局面に入る可能性が高いため警戒が必要であると考えています。
原発問題や計画停電が現在進行形であることから、日経平均株価がこのまま順調に反騰を続けると楽観的に考えるのは危険であるように見えます。
鉱工業在庫循環モメンタムの動向
金額ベースのデータをベースにした2月の鉱工業在庫循環モメンタムの基本的な形状は、数量ベースの出荷在庫バランスと大きな相違は見られません。
最近の動きを拡大すると、下げ止まりの動きが鮮明です。
鉱工業在庫循環モメンタムと日経平均株価
景気の動向と株価には、かなり高い連動性が観察されます。
鉱工業在庫循環モメンタムと日経平均株価の動向を重ね合わせると、基本的な連動性の高さは見られますが、最近は株価の堅調さが目立っていました。国内の経済要因によるものというよりは、米国株式市場の好調さに引っ張られたことが背景であったと見られます。
ところが3月に入って日経平均株価は東日本大震災の影響を大きく受けて急落しました。3月17日につけた日経平均株価8.962.67円は、在庫循環モメンタムから上方に大きく乖離していた株価が、再び本来の水準に引き戻されたように見えます。
その後、日経平均株価は反騰局面に入りましたので、3月31日の9,755.10円で見ると、株価は再び在庫循環モメンタムから上方への乖離が目立ってきました。
そこで、今後の日経平均株価の動きをどうみるのか?
はっきりしていることは、3月以降の在庫循環モメンタムが大きく下落する可能性が高いことです。もし、日経平均株価がこのまま反騰を続けるとすると、乖離はますます大きくなります。
景気と株価は基本的に連動しています。したがって在庫循環モメンタムの動きに反して日経平均株価が上昇を続けると楽観的に見るのは避けたほうがよさそうに思われます。しかも、原発問題や計画停電が産業活動や消費動向に与えるダメージの大きさが確定しているわけではありません。
超長期サイクルから見た日経平均株価の動向については全く心配していないのですが、今後数か月の短期的な視点から見ると、決して予断は許さないと思っています。
ただし、リーマンショック後のボトムまで落ち込むことはなさそうだと見ていますので、日経平均株価が8,000円を割り込むことはないと考えます。
なぜリーマンショック後のボトムまで落ち込むことはないと見るのか?
予断は許しませんが、計画停電の影響もあって、生産が落ち込むため、在庫も大きく落ち込む可能性が高く、在庫循環モメンタムの下落に対するある程度の歯止め効果になることを期待するためです。自信が十分にあるわけではないのですが・・・
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