地震直後の様々な不安、パニックで異常な動向となった先々週と比べて、先週の日本株は比較的落ち着きを取り戻してきました。日によっては外国人投資家の動向が買い越しとなる日もあり、海外市場で復興特需に期待する動きが出始めているという状況も見え隠れしています。震災直後の異常な円高と言い、世紀の大災害からたった2週間、それも原発事故まで起きている状況の中で復興への期待から買いが入っている状況と言い、世界市場からの日本への信頼感というのは本当に揺るぎのないものなのだと感じます。これこそまさに日本株特有の動き方と言えるでしょう。
パニック売りから一転して9,500円台を取り戻した日経平均ですが、この間の動きで高勝率の逆張り型システムは大きな利益を出しています。私たちがterraceで公開している「50万円からの低リスクトレード」システムも、20%以上の利益を出しました。やはり急激に発生するボラティリティの大きな動きに対してはシステムトレードの有効性が際だちます。しかし、このシステムが売買サインを出した日に買うことができた人は相当システムトレードに慣れた人だけだったでしょう。毎日千人単位で死者が増え、原発が次々爆発をする状況で日経平均が1,000円以上も下げた次の日に果たして自分は買えるでしょうか。これが、いかに有効なシステムを持っていても簡単には資産を増やせない原因です。システムトレードの有効性と難しさを同時に見せつけられた二週間でした。
今後の展開ですが、被災地の状況を考えると、今から買いの長期的なポジションを持つことはあまり得策とは言えないように感じます。確かに株価水準は直近まで続いていた2009年3月から続く長期トレンドの下のサポートライン内までは戻ってきています。しかし、まさにそのサポートライン付近で株価の動き方が鈍くなっており、このまま上昇を続けるとは考え辛い動向と言えるでしょう。
何よりも報道を見るだけだったり、被災地でも津波被害のなかった地域にいたりすると復旧の兆しも感じられますが、先週から二度にわたって津波被害のあった地域で救援活動を行ったとき、私たちが見たものは本当に手のつけようのない惨状でした。比較的津波被害の少なかった東松島市矢本地区でさえ、誰も仕事に戻れていないような状況です。かつて宮城県第二の都市と言われた石巻や、多賀城市の海沿いはもっと大きな被害を受けています。原発の被害も、まだどこで収まるか見えていません。
このようにテクニカル的にもファンダメンタル的にも下落トレンドへの転換が見え始めています。空売りのシステムであればシグナルが出る可能性もありますが、買いのポジションは持たない方が良い状況と言えるでしょう。
今週の指標は、今日国内で2月の完全失業率が発表されます。まだ震災後の失業率が数字に出てきませんので、4.9%で横ばいとなる予想が立っています。また、明日は2月の鉱工業生産が発表されます。こちらは0.1%低下の予想となっています。アメリカの指標は、今日1月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数が発表されます。さらに、水曜日にはADP、金曜日には雇用統計の発表が予定されており、横ばいの8.9%が市場予測値となっています。ユーロ圏では木曜日に消費者物価指数、金曜日にユーロ圏雇用統計が発表されます。全体的に雇用関係の重要な指標が多くなっていますので忘れずに確認しておきましょう。
混迷した状況ではありますが、金曜日には4月1日となり、新年度を迎えます。苦難の新年度スタートとなりますが、夏の電力供給不足や東日本の拠点が受けた被害による大企業の業績低迷、原発から放出された放射性物質の除染作業など、まだまだこれから乗り越えなければならないことはたくさんあり、今後はこれらのことを株式市場がどう織り込んでいくかが焦点となります。まだしばらくは、指標よりも震災による出来事が株価に与える影響の方が大きくなりそうです。