10日のNYはバーナンキ議長の講演が0.5ポイントの大幅利下げを示唆したことで117ドルと大幅な反発をしめした。とはいえ、日足チャートでも一目均衡表の転換線にもとどいていない。日足のMACDもようやく下げどまりかけているものの、マイナスが深く、まだ自律反発の域をでていないと思われる。日足のボリンジャーもまだ強い下向きを維持しており、日足のレベルでもまだちゃんと反転したとはいえないだろう。
実際、そのあと、来週の金融機関の決算をめぐって損失拡大の報道が流れ、アメリカの景気後退についての懸念が再び広がって、現時点(日本時間11日23時)ではダウは再び100ドル以上の大幅な下げに転じ、前日の戻しをすべて帳消しにしている。0.5ポイントの利下げでも景気後退の懸念を払しょくできないということは、極めて深刻な状態といわねばならない。ダウは目先の戻しはこの程度で、さらになにかポジテイブなサプライズがおこってこない限り、月足、週足の下降トレンドにそってさらに下げてゆく可能性が高いのではないか、と思われる。
為替は現時点で108円台と少し円高に振れている。110円あたりをやはり抜けなかったことで、戻しの限界がはっきりしてしまったので、今度は、再び円高を試してゆくことになるのではないか。たびたび言っているが、月足、週足のトレンド指標は円高方向であり、しかも月足でも雲をつきやぶってしまっているので、108円あたりをぬけてしまうと103円ぐらいまでどまるめどがないので心配だ。
アメリカの景気後退は、日本にとっては、まず最大の顧客の財布がひあがってくることを意味するが、政策当局がそれに対して大胆に利下げで立ち向かうと、今度は金利差縮小で、円高を招いてゆくことになる。だから二重に日本の市場にはダメージになるのではないだろうか。だから利下げ報道でNYはあがっても、東京は簡単につれだかするわけにはいかない。アメリカ経済の景気後退が鮮明になってゆけば、為替はどうしても円高にふれてゆくだろうから、それをあわせれば、NYの下げの倍ぐらい東京がさげてもさほど不思議とは思えない。
ところがアメリカの景気後退、為替円高懸念に加えて、さらに日本株にとって重大なのは、日本自身の景気の後退懸念が明確になってきたことだ。景気ウオッチャー調査が悪かっただけではなく、セブンアンドアイや高島屋・松坂屋連合までもが業績の下方修正に動いたということで、日本の景気が腰折れしてしまっていることがはっきりしてきた。アメリカが後退するのであれば、日本経済としては、これまでの外需だのみにかわって、内需が頑張らなければならないはず。その内需が、拡大するどころか、失速しつつあるというのでは、まったくどうにもならない。
実際日経平均は、昨年6月の安値をきってきて、月足一目均衡表でみても、ついに遅行スパンが雲に突入してしまった。次は13600円の転換線、13030円あたりの基準線が攻防ラインとなりそうだ。だが、月足のMACDは勢いよくおちてゼロラインに接近中であり、月足のボリンジャーも大きく下に開いていて、マイナス2σのところに張り付いている。常識的にみれば、さらに下げる兆候であると思わねばならない。月足のRCIは3.33と底に到達しているが、これまでの例をみてもすぐにはうわむかないから、数か月から長ければ1年ぐらい、底にはりつくかもしれない。
信用買い残が減っていて、個人投資家の投げはかなり終わりに近付いているものの、外国人投資家が、日本の内需の弱さをみて、不動産株などを見切り売りしているともいわれているようだ。来週以降、アメリカ経済と為替の動向いかんでは、さらに日本の見切り売りが広がって、14000円台をきってくる危険もあると思わねばならない。
深刻なのは、日本の政策当局がまったく危機感をもっていないことだ。アメリカでは政府もFRBも一生懸命やっているが、それでもずるずる下げている。ところがアメリカより脆弱で、独歩安になっている日本では、政策担当者は、サブプライムは日本には関係ないよとか、まだ景気拡大の好循環があるとかまるで他人事のようにのんきなことをいっていて、ちっとも経済の「空気がよめていない」。福田内閣はいつも事態が手に負えなくなってから、おっとりがたなでおそるおそる出動してくる癖があるようだ。このままでは、政治的にも経済でも、福田内閣は、スーパーKY後手後手内閣になってしまうのではないだろうか。