先週の後半は急に降って沸いた”日本国債格下げ”という報道に為替も株価も振り回されました。
しかし、正しくは”日本国債”の格付けが下がったわけではなく、おそらく一過性の話題で相場に与える大きな影響はないと考えて良いでしょう。今回S&Pが格下げをしたのはS&P社が独自に設定している長期ソブリンの格付けであって、日本国債そのものの格下げではないのですが、日本国内の各報道機関はあたかも日本国債そのものが格下げされたような報道をしており、これに惑わされてしまっている方々が多いようです。実体はS&Pが売っている商品の格下げでしかありませんので、さほどあわてる必要はないと考えられます。
確かに日本の財政はざっくりと収入の倍の支出がある状況ですから楽観できるものではありません。しかし、その支出の大半を国内で吸収していると言うところに日本の特異性があります。支出の不足分は国債発行で補うことになりますが、日本国債はほとんどが自国内で吸収されているという現状があり、確かに国民からの借金といえばそうではあるのですが、日本と諸外国という国の関係で見ると対外的な借金はほとんどありません。そういった意味ではギリシアやアイルランドのような状況に陥ることはまず無いと考えて良いでしょう。
もちろん日本国民が国債なんか買っていられない、という判断をするのであれば絶対安全とは言えないのですが、自分で意志を持って日本国債に投資をしている人はあまり多くはありません。国債を買っているのはほとんどが国内の銀行です。つまり、銀行に預金している人は間接的に国債を買っている、ということになります。日本国民全員が銀行から預金を引き揚げればこの図式が崩れて国債の買い手が付かなくなる事態に陥る可能性はありますが、それは現実的には考えられない事態でしょう。こういった日本独自の背景もあり、今回の騒動は早々に終結するものと考えられます。
今週の指標発表は、まず今日アメリカで1月のISM製造業景況指数(57.5への上昇予想)、EUでのユーロ圏失業率(10.1%)があります。また、明日はアメリカでADP雇用統計の発表があります。先月はADPが予想値よりも大きく上ぶれたため市場が反応し、その後の雇用統計への期待が集まったもののたいした改善が見られずに株価が下がるということがありました。予想は15万人の増加となっていますが、今月も慎重に見極める必要がありそうです。木曜日にはアメリカでISMの非製造業景況指数(57.0予想)も発表されます。
ADP雇用統計が大きな山場になりますが、株価は期待感だけで先月のように大きく動きますので、流れに押されて投資方針を見失わないよう、気をつけましょう。