景気サイクル分析の基礎(1)に関するご質問

スケアクロウさん
スケアクロウさん
読者の方からご質問をいただきました。重要な内容が含まれておりますので、本文中でお答えさせていただきたいと思います。

(質問)

いつも興味深い記事をありがとうございます。お時間があれば3点ほど教えてください。

1 出荷在庫バランスは前年同月比でとらえていらっしゃいますが、季調済みの前月比でとらえた時はまた別の傾向が出るということはないでしょうか? 変化が小さすぎて傾向はでないでしょうかね?

2 出荷在庫バランスのトレンドは今後どのようになるとお考えですか?年内はゼロレベルを目指すのでしょうが、その後ですね。

3 10月以降に自動車の大幅減産が予定されていますが、これによる出荷在庫バランスへの大幅なインパクトはあるでしょうか?

(回答)

ご質問、大変にありがとうございます。



1.季節調整済み前月比か? 原指数前年同月比か?

 季節調整済みの指数はその名の通り季節変動という要因を取り除いた指数です。したがって、前月比で変化を把握することができます。

 原指数は、季節調整をしていないので、前月比で状況を判断することができないため、前年同月比を用います。こうすることで、季節調整という操作をしなくても、変化を把握することができます。

 したがって、理屈から言えば、季節調整済み前月比も原指数前年同月比も同じようなものになるはずなのですが、実際には異なる場合も少なくないので、両方をチェックするのが望ましいかもしれません。

 ただし、季節調整済み指数は、季節調整係数の改定があるたびに、過去のデータもすべて変わってしまいます。その都度過去のデータを丸ごと更新しなければなりません。データの管理にはかなり神経を使います。

 その点で、原指数は、時折過去1-3年にわたる改定があるのですが、過去の時系列データがすべて無駄になることはありません。

 というわけで、加工度の高い「季節調整済み指数」に依存するよりも、原データに近い「原指数」を用いるようにしています。

 実は、アナリストとして活動していた時には、この「原指数」よりもさらに原データに近い「実数」を使って、製品ごとの出荷在庫バランスや在庫循環モメンタムを作成していました。鉄鋼のホットコイルの出荷が何トンで、在庫が何トンという具合です。

 そのような経緯から、なるべく加工度の低い生のデータを重視するように心がけています。

 蛇足かもしれませんが、季節調整済み前月比と、原指数前年同月比が大きく離れている場合は、原指数前年同月比の時系列をグラフで追っていくと、季節調整済み前月比の動きが矛盾なく把握できることが多いようです。



2.出荷在庫バランスの今後の動向について

 鉱工業出荷在庫バランスとほぼ同じ動きをする鉱工業在庫循環モメンタムの今後の動きをみると次のようになりそうです。



 ポイントは、基調として下落トレンドということで、減速感が強まるだろうということです。ただし、来月に発表される8月の数字は一時的に上昇する可能性があると見ています。暑夏効果を考慮するともう少し強いかもしれません。ただし、それは一時的なものである考えています。



3.10月以降の自動車減産の影響について

 駆け込み需要とその反動ということで、むしろ来月発表される8月の数字に、大幅増産と出荷の増加がどのようなバランスとなるかに興味を持っています。10月以降は出荷が反動減となりますので、、それに対応する減産がなされます。そのため、在庫の伸びが抑制されるだろうと現在のところは見ています。

 したがって、もし十分な減産がなされて在庫がコントロールされるならば、出荷在庫バランスの低下は、駆け込み需要の反落分にとどまりそうです。

 もし減産が不十分であれば、在庫が積み上がってしまいます、その場合は、駆け込み需要の反落分に加えて、在庫の積み上がり分が、出荷在庫バランスの下落幅を大きくしそうです。

 いずれにしても、8月と9月の指標を追っていれば、ある程度の感覚がつかめると考えています。

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本文中で使用しているデータやグラフ類は主に次の各社の公表しているものにお世話になっております。経済産業省、内閣府、日本銀行、東京証券取引所、CME GROUP、CBOE,CNN MONEY、MSN MONEY、アット・ニフティ・ファイナンス、Yahoo!ファイナンス、サーチナ、外為どっとコム 
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