先週金曜日に欧州銀行監督委員会(CEBS)がストレステストの結果を発表しました。
これを受けて、ダウ平均株価は102.32ドル、0・94%と大きく上昇していますから、マーケットは一応歓迎の意思表示をしたことになります。
しかし、ストレステストの評価がこれで確定したと考えるのは早すぎると考えます。
理由は前提条件にあります。
特に気になるのが、不動産価格の前提です。2011年の標準シナリオと悪化シナリオを比較すると次のようになっています。
商業用不動産価格
(A)標準シナリオ (B)悪化シナリオ英国 0.0% -10.0%ドイツ 0.0% -10.0%ギリシャ 0.0% -2.0%アイルランド -6.0% -8.0%
住宅用不動産価格
(A)標準シナリオ (B)悪化シナリオ英国 1.0% -10.0%ドイツ 0.0% -10.0%ギリシャ 0.0% -2.0%アイルランド -2.5% -5.0%
標準シナリオと悪化シナリオが、英国やドイツでは10%ポイント乖離しているのに対して、ギリシャやアイルランドでは僅か2-2.5%ポイントでしかありません。
原文の資料はこのように表現されています。
次にGDPの想定。基本的には異存があるわけではないのですが、正直なところ、マイナスのGDP成長率を経験している我々日本人にとっては、下の図に示されている悪化シナリオでの僅かな僅かなマイナス成長率が、それほど厳しい前提条件であるのかどうか疑問を感じます。むしろ、マイナス成長もなく、長期間にわたって好景気を享受し続けることが出来たことの方が異例と考えるべきであるように思います。
いずれにしても、91銀行のうち84行がストレステストをパスしたというのは、前提条件の甘さによる影響もあるのではと危惧しています。
今日の日経新聞のストレステストの記事の横には、23日に7つの米国の地域金融機関が破たんしたことを伝えています。米連邦預金保険公社(FDIC)によれば、今年になって103件が破綻したそうです。
それと比べるのは必ずしも適切ではないのでしょうが、ギリシャやポルトガルなどの金融機関が、たとえ悪化シナリオの中でも、比較的に健全な状態を揃って維持できるとする調査報告の内容を、株式市場が歓迎してそのまま織り込むのかどうか、予断を許さないようです。
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