国際石油開発帝石の株価が急落しています。大型ファイナンスが背景にあるのですが、その影響度について考えてみました。
多少長くなるので、結論を先に申し上げておくと、すでに株価はファイナンスの影響をかなり織り込んだと思われます。多少軟調な局面が続くかもしれませんが、長期的な観点から魅力的な投資対象と言えそうです。
最大5872億円の公募増資を織り込む前(7月8日)の株価と財務データは以下のようになっていました。財務データは一株当りですのでご注意ください。
公募増資発表後(7月9日)の株価と財務データは次のように、かなり劇的に変化しています。株価は476,000円から415,000円になっています。最大130万株の発行を前提に、1株当りの財務数字は大幅に減少しています。
では、これが財務分析や株価評価にどう影響するのでしょうか?
まず公募増資発表前の状況です。
来期予想ベースで、営業利益率(54.02%)、総資産回転率(0.40回転)ですので、両者を掛け合わせたOROA(総資産営業利益率)は21.48%でした。
当期利益率(11.84%)、総資産回転率(0.40回転)、財務レバレッジ(1.40倍)を掛け合わせたROE(株主持ち分利益率)は6.59%となっています。
株価476,000円は、BPS(1株当り純資産)662,512円にPBR(株価純資産倍率)0.72倍を掛け合わせた水準です。
そのPBRは、PER(株価収益率)の10.90倍にROE(6.59%)を掛け併せて算出できます。
もう一つのPBRの計算の仕方は、PSR(株価売上高倍率)1.29倍、総資産回転率(0.40回転)、財務レバレッジ(1.40倍)の3つを掛け合わせることによっても算出できます。
このように、一見ばらばらに見える財務指標がすべて結びついているのが面白いところです。説明が抜けてしまいましたが、財務レバレッジは自己資本比率の逆数です。そして、自己資本が厚くなれば、数字は低くなります。
そして、私はPSR1.8倍程度が妥当と考えて、目標株価を66万円強と考えていました。なぜPSR1.8倍か? 実は1.8倍のPSRに総資産回転率(0.40回転)、財務レベレッジ(1.40倍)を掛け合わせるとPBRが1倍と計算出来ます。収益力の高い資産ですからこの程度の評価が適正と見たわけです。
そこで、公募増資発表後に、これらの数字がどう変化したかを見てみましょう。
利益率は変わりませんが、総資産と株主持ち分が膨らむために、来期予想ベースで、総資産回転率は0.40回転→0.32回転、財務レバレッジは1.40倍→1.26倍に低下します。
したがって、OROAは21.48%→17.52%。ROEも6.59%→4.83%と下落します。
それを受けてPBRは低下するのですが0.72倍→0.71倍と意外に僅かな低下です。しかしBPSは583,324円と大きく下がるため、BPSにPBRを掛け合わせた株価が415,000円となっているわけです。
では目標株価は?
とりあえず、公募増資発表前のPSR1.80倍を妥当PSRとしています。株価と売上高の関係はそう大きく変わることはないと見るためです。すると、目標株価は43万円弱。かなり下がりますが、現在の株価よりは上にあります。つまり、公募増資の影響はかなり織り込んだと言えそうです。
ただし、PSR1.80倍とすると、PBRを0.73倍と見ていることを意味するので、正直なところかなり保守的な見方という気がします。近い将来にPBR1倍の水準の評価へ復帰するのではないかと思っています。その場合の目標株価は43万円弱ではなく58万円強となります。
というわけで、ファイナンスで低迷している国際石油開発帝石に注目したいと考えています。
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