つまにもさんのブログ

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今の状況を正しく書くなら  引用

ああ、私の言いたいことってファンドマネージャーがいうとこういうふうに言うのね

ですのでまだまだ株を売っていいわけです。


http://japan.pimco.com/LeftNav/Featured+Market+Commentary/IO/2010/Bill+Gross+June+2010+Investment+Outlook+JPN.htm





Investment Outlook
ビル・グロース | 2010年6月

2が3になることもあれば
3が2になることもある


16トンの重荷を背負って、何が得られるのだろう
明日になれば1日分、歳を取り、借金がさらに増えるだけ
聖ペテロ、どうぞ私を呼ばないで。私はあなたの下には行けないのだから
私は魂まで、会社の思いのままだから
       テネシー・アーニー・フォード


借金や債務は借り手、貸し手双方にとって悩みの種になるものであり、遠い昔、シェークスピアはこう助言しています。「借り手にも貸し手にもなるな」。1兆ドルもの資金の運用、すなわち、債券を買うという形で貸し手になっている男が随分と不可解なことを言う、と思われるかもしれません。私自身もそう思います。しかし、時計の針を1968年に戻すと、私は貸し手となることによって面倒な問題に巻き込まれ、まさに最悪の事態に陥ってしまいました。以来、私はそれをずっと後悔しています。当時、私は海軍士官であり、メコン・デルタとマニラ湾海域で艦隊勤務に就いていました。どういう訳だか、私が道徳的な指針を見失い、座礁してしまったのはベトナムではなく、フィリピンでした。実は当時、「2を3にする」ことを経営方針とする「給料日」ローン会社を模した小さな事業を立ち上げたのです。港に停泊している艦船の水兵は常に金欠状態です。一方、私は婚約中の身でもあり、ビールは一杯限り、門限は9時という自ら定めた規則を守っていました。そこで、手元の資金を使って、喜んで水兵達に手を「貸す」ことにしたのです。この「2を3にする」システムには問題はないものと思われました。なぜなら、所詮はビーチに繰り出して、大いに騒ごうという際の個人的な貸し借りだったからであり、わずか数週間後に艦が出港すれば、「給料日」融資という性質の通り、貸付金は容易に回収できました。そして、殆どの投資家が簡単に計算できる通り、年率換算利回りは1000%を大きく超えました。融資には、高利貸しから窃盗に近いものまで、さまざまなものがありますが、私の給料日見合いの融資が後者に近いものであったことは明らかです。給料がわずか数百ドルであったため、融資した金額は多くありませんでしたが、200が300になり、それが450、675、1000と次第に膨らんでいきました。何度か港に寄るうちに、米国政府による給料日は私への返済日になり、私は軍艦「入隊するんじゃなかった!」号の金融ボスになりました。しかし、口の軽さは船を沈めると言いますが、本当のボスである艦長がグロース少尉の蓄財を察知するまでに、そう多くの時間はかかりませんでした。艦長は自らこのスキームに一枚噛むことはせず、艦長としての務めを立派に果たしました。すなわち、艦長は私に稼いだ利益を全額返済するよう命じ、私の軍務が終わるまで、私をこの船に閉じ込めました。このため、ビールで大騒ぎすることもできなければ、帰国の途上、観光で東京を見て歩くこともできませんでした。何から何まで無くしてしまったのです。しばらくの間、2は3になりましたが、最終的にはそのおかげで、私は山のような問題を抱え込むことになりました。これは自業自得なのですが、良い教訓になりました。それ以来、利回り1000%の融資には、決して手を出さないようにしています。

さて、過去40年間で私が学んだもう1つの教訓は、「2が3になる」だけでなく、「3が2になる」こともあるということです。そして、たとえば「デフォルト」時に見られるように、時として3がゼロになることもあります。それゆえ、貸し手は「高リスク」ローンに対するプレミアムを求めるのです。確かに、リスクが高いかどうかは、主観的な判断であり、だからこそ、その昔、JPモルガンは、融資の最も基本的な基準とは「物件、もしくは担保」ではなく「借り手の人物」をである、と言ったのです。それでも冒頭に掲げた「16トン」の炭坑夫の哀歌のように、はじめの環境が悪くては、人物だけでカバーできることには、限りがあります。「私は魂まで、会社の思いのままだから」という一節は、現代の家計だけでなく、ソブリン国家にもあてはまります。債務の重荷が積み上がるには数十年かかりますが、それが危機に変わるまでは、わずか数ヵ月です。多くの投資家やエコノミスト、政治家は、なぜ融資に対する姿勢と融資基準がこれほど短期間で一変し得るのか、すなわち、1968年に私が乗船していた艦で起きたのと同じように、無害と思われた「2を3にする」債務の積み上げが、何故、突如として危機を引き起こすのかについて、ほとんど理解していません。こうした人々は、市場や雇用、経済が「回復する」ことを前提に動いています。パフォーマンスの悪い投資家の間では、「戻るまで待っているだけだ」という言葉が共通して聞かれますが、これは多くの失業者や仕事に不満のある労働者の間で繰り返し聞かれる「いずれ良い仕事に出会える」という悲しい決まり文句にも似ています。実際には、戻らないこともあれば、良い仕事に出会えないこともあります。実体経済でも、金融経済でも、「3が2になる」ことはあるのです。

こうした局面は、借り手の債務の規模と、その負担から逃れるための成長の可能性、という点から特徴付けられます。過大な債務とはどれほどの規模を指すのでしょうか。低すぎる成長がどういった水準なのか、確実なところは誰にも分かりません。ケネス・ロゴフ氏を始めとする経済史家は、債務水準がGDPの80~90%になると、その国の実質成長が圧迫され、「16トン」の重荷を背負っていくことは一層難しくなると指摘しています。ギリシャはこの水準を大幅に超えており、民間市場の貸し手が手を差し伸べることに二の足を踏んでいる一因もここにあります。政府債務に加え、企業と家計の債務を合算した場合、状況は一層不透明になります。それは利用できる過去の統計が乏しく、さらには、企業の多国籍化が一段と進んでいるためです。一方、米国の債務の長期トレンドは、下のチャートが示す通り、常識的に判断すれば持続不可能な領域に達しつつあり、実質金利が低下するのではなく、上昇することになれば、債務を履行するために必要な「成長」を確保することができなくなります。リーマン・ブラザーズの破綻に端を発した流動性危機を巡ってさまざまな動きがあった1年半前、貸し手は尻込みしましたが、今、再び尻込みしつつある理由はここにあります。過大な債務と過小な成長の組み合わせは「3が2になる」局面を作り出すものであり、そうなると、貸し手は信用の供与を控えることになります。





確かに、ソブリン債務国は今や、皆、一様に正しいことを言っており、一部には債務残高の拡大への歯止めを確実にするための法律を施行するケースも見られます。ギリシャや他の南欧諸国だけでなく、フランス、英国、日本、そして米国までもが危機意識を露わにしており、これは最終的に、財政不均衡を縮小させ、対GDP財政赤字比率を低下させることになるでしょう。しかし、クレジット市場と株式市場の投資家の厳しい目は、多くのソブリンが十分な施策を講じておらず、そこから抜け出す唯一の方策は、穏やかな言い方で言う「リストラクチャリング」、すなわちデフォルトしかないのではないかと考えています。EUやIMFによって課されるLIBOR+300~350bpという高い金利を支払いながら、ギリシャが「16トン」の重荷から抜け出せる現実的なシナリオを描くことはできません。財政緊縮化は、その趣旨こそ保守的ですが、短期的には経済成長を低下させるものです。ソブリンの予算の緊縮化は、公務員の削減や給与の引き下げ、年金給付の削減、消費の圧迫を招き、そして、財政当局から民間部門への景気の牽引役の交代に水を注すものであります。景気後退が確実になり、GDP対比での財政赤字の比率は、リスク・プレミアムの急上昇と分母であるGDPの縮小とにより、一段と上昇することになります。このように、多くのケースで、財政赤字を削減することによる債務危機からの脱却が、不可能になる可能性があるということです。

数ヵ月前、私は、債務を増加させることにより債務危機を乗り切ることができるか、というレトリックを問うてみました。その答えはイエスでしたが、条件付きのイエスです。当初の環境が良好である場合、すなわち、対GDPでの債務比率が相対的に低く、短期の政策金利を低水準、もしくはマイナスに引き下げることが可能であり、また、財政を赤字にして、経済成長を牽引する分野に投資できる場合、その国は債務を増加させることによって債務デフレから脱却することが可能です。しかし、これに当てはまる国は、ごくわずかです。ことによると、米国はそのような国の一つに数えることができるかもしれませんが、PIMCOを含め投資家は、米国の財政赤字が将来の高い成長率に繋がるかどうかについて、強い疑念を持っています。

このように、困難な状況が進行しつつあることが、シェークスピアの言う「貸し手にも借り手にも」、一層明確になりつつあるということです。財政緊縮化と財政規律はギリシャやその他の多くの国にとって遅すぎた可能性があります。赤字支出を継続させることは、わずかな国にだけ許された途方もない特権かもしれません。その中間に位置しているのが多くの先進国であり、こうした国は「ニューノーマル」における、これまでよりも低い成長率に直面し、さらにはその終着点まで、アップダウンの激しい旅路を辿っていくことでしょう。

投資家は、今後待ち受けているこの厳しい旅路、すなわち、過大な債務と、それを履行するには低すぎる経済成長を背景にしたレバレッジ削減プロセスを、そのまま受け入れる必要があります。「2が3になる」運用の世界は過去のものです。1000%ではなく、株式と債券に分散したポートフォリオで4~6%程度の年率換算リターンが妥当なところでしょう。しかし、注意してください、時には「3が2になる」こともあるのです。

ウィリアム・H・グロース
マネージング・ディレクター

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