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日本の農業を変える「らでぃっしゅぼーや(3146)」

たまに街で見かける白地に野菜柄のカラフルな軽トラック。

有機野菜、無農薬野菜などの会員制個別宅配で(知ってる人には)良く知られる「らでぃっしゅぼーや(3146)」の専属トラックです。

らでぃっしゅぼーやは、1988年に環境NPOを母体として設立されました。当時、有機野菜などの無店舗販売では生協などの共同購入があったものの、個別宅配システムは存在しておらず、当社はその先駆者であったわけです。

2000年からは青汁で有名なキューサイ(今は非上場)の連結子会社となっていましたが、2006年に経営陣による株式取得(MBO)を行い、2008年12月にジャスダック市場に上場されました。

会員数は、キューサイグループ入りした2000年から6年間は年率3%強の増加ペースでしたが、MBO後の5年間は年率8%強とピッチを上げ、10/2期末時点で約10万1000名、11年間で会員規模は1.8倍となっています。

売上高については過去の公表データが見当たりませんが、社長曰く、過去10年で90億円程度増加しているということなので、1.7倍くらいにはなっており、概ね会員数の成長に見合った売上成長を遂げていることになります。

利益率は、10/2期の売上高営業利益率が2.3%、過去最高益となった09/2期でも3.6%と低く見えますが、ROE(株主資本当期利益率)は10/2期で5.9%、最高益の09/2期は9.8%と悪くない水準です。

10/2期に減収(前期比2.3%減)、大幅減益(経常利益同31%減)となったのは、1)客単価の大幅低下(会員数4%強の増加に対し客単価は約7%低下)、2)システム投資関連費用の増加、3)集客プロモーション費用の増加、などによるものです。

11/2期会社計画は売上高5%増、経常利益は4.6%増を見込んでいます。

客単価は3月中旬から下げ止まり基調となっているようですが、通年で客単価は微減を想定しており、会員数は後で述べるような施策効果などによって約7000名の純増(10/2期は4000名強の純増)を見込んでいます。

利益面では、システム投資関連の費用増が続くため、低めの増益率が計画されています。

会社計画上ぶれ、下ぶれの可能性については現時点ではまだ判断できません。

さて、この会社に対して浮上するきわめて自然な疑問。

NPOが母体の会社でちゃんと投資家の期待に沿うような効率経営、成長戦略を追求できるんですか?

しかし、少なくとも私の印象としては、期待を裏切る(?)合理的で綿密な、また先見性のある経営戦略を遂行しているようで、非常に好感が持てます。

まず当面の戦略としては、客層をきちんとカテゴライズして、それぞれのニーズを充足させる方策をきちっと打っていきます。

まず、客層のボリュームゾーンは30-45歳の子育て層。会員の約6割を占めます。

この層は、支出のかさむ世代であるため、必要なものが安いことが重要で、パン、牛乳、豆腐や冷凍総菜など基本的な7カテゴリーについて、従来品より3割程度割安の商品を6月から投入します。子供の年齢によって配送料を割り引くサービスも導入します。

55歳以上のシニア層は、会員数では子育て層より少ないのですが、購入頻度、平均単価ともに高く、「やめてもらうと困る」層です。

この層に対しては、一定の基準を設け、プレミアム会員制度を導入します。専用電話デスクの設置によりアクセスを向上し、配送曜日や時間帯の希望にも柔軟に応えるようにします。また、年間1000円の会費を免除し、商品数に限りのある商品をプレミアム会員特別商品として紹介します。

第3の層として「プレママ層」。共働きで世帯年収が高い一方、時間が制約され、「必要な時に必要なものだけ欲しい」とうニーズが強いカテゴリーです。

こうしたニーズに対応するため7月からネットストア「eらでぃっしゅ」を本格スタートします。会員になる必要がなく、年会費無料で1品から注文可能、配達の時間指定も可能、そのかわり配送料を支払ってもらいます。

こうした客層カテゴリー別の戦略に加えて、客単価向上のため、6月からカタログを4ページ増やし、アイテム数を10%増量します。子育て層のための割安デイリー商品のほか、隔週紹介だった売れ筋商品を毎週掲載します。

より長期的な戦略としては、「農業」への参入が目玉です。

当社は千葉県香取市に約10ヘクタールの「らでぃっしゅファーム和郷」を所有し、10/2期から農業事業をスタートさせましたが、初年度黒字を達成した模様です。

参入当初は「3年間の赤字は覚悟してください」と方々でいわれたそうです。社長は「そんなことはない。やりかたが悪いのだ」と考えていたそうで、実際、種まきから収穫まで全ての作業を人・時間に換算し、ストップウォッチを持って作業、畑ごとに月次決算を作って徹底管理を行った結果、本来単価が安く利益を出すのが難しいといわれる根菜類で初年度黒字を達成しました。

今後、とりあえず北海道、九州へエリア拡大を計画していますが、将来的には全国展開を目指しています。

日本の農業市場規模は約8.5兆円で、担い手の約6割が65歳以上だということです。放っておけば、市場規模はどんどん縮小するはずで、食料自給率を維持させるためにもだれかがそのシェアを取りにいかなければならない、それが当社の責務でもあると考えているようです。

社長によれば、農地の集約、規模の拡大、管理の徹底によって、有機野菜でも現行の2-3割は安くできると自信を持っています。

当社は現時点で全国2600戸の有機・無農薬農家と直接契約で作物を仕入れています。まず同社のパイロットファームでノウハウを確立したうえで、この2600戸の農家と提携しながら、全国で農業の共同経営を行っていくというのが将来的な構想です。

日本の農業はいい方向に変わるかもしれないな。。。という期待を初めて具体的に感じました。

有機野菜はいいけど高いではダメ。まだまだ努力の余地はある。というのが社長の弁です。

株価バリュエーションですが、今期会社予想ベースのPERが16倍、予想ROE 5.9%に対して予想PBR 1倍、予想配当利回り 1.2%。来年くらいまでの展望からすればまあ高くもなく安くもなくといったところです。

でも夢のある会社だと思います。有機野菜の効率生産、低価格化による将来的な市場拡大。日本農業の活性化。意義のあることだと思います。
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