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成長シナリオは何処?船舶用機器の老舗「古野電気(6814)」

古野電気(6814)は、1948年に設立された「世界で初めて魚群探知機の実用化に成功した会社」です。

現在では世界トップの船舶用機器メーカーとして知られ、大型商船向けから小型プレジャーボート用まで幅広い製品を取り扱っていますが、強みがあるのはやはり魚群探知機などのレーダー系で、これまでも日本漁業の盛衰と歩みをともにしてきたようなところがあります。

そういう意味では、会社として一番盛り上がったのは遠洋漁業の最盛期であった1960年代から70年代半ばということになるのかもしれません。この期には海外展開も積極的に行い、まさに黄金期であったといえます。

1977年に「排他的経済水域」いわゆる200カイリ水域が設定され、日本の遠洋漁業も転換点を迎えます。ところがちょうどその頃から、日本沿岸でマイワシが大量にとれるようになったそうで、これは数十年単位のサイクルがあるそうなのですが、これによって魚群探知機が大量に売れ、80年代前半までは得意分野にまだ勢いがありました。

しかし、1985年プラザ合意後の円高でいよいよ遠洋漁業が衰退し、近海のマイワシも漁獲量が減り始めました。

得意の漁業向けに先が見えなくなると、今度は一般商船や小型プレジャーボート向け市場の開拓に乗り出します。

2000年代以降になると、中国を中心とする資源輸送の盛り上がりで商船の建造が急増したため、古野電気は再び成長軌道に乗りました。

というのが、これまでの成長ストーリーです。

しかし、今置かれている現状は相当厳しそうです。

商船分野は、今や船舶用機器売上高の半分強を占める主要部門ですが、造船業界では2010年に新造船竣工のピークを迎え、受注のほうは既にピークの1/4程度に急減しています。今後受注の底打ちは予想されるところですが、過去数年の造船ブームがあまりにすごく、既に船の余剰感は相当に大きいので受注回復ペースは非常に緩やかでしょう。

プレジャーボートは中国などで需要拡大が見込まれますが、世界全体としての市場規模はピークから30%程度縮小しています。古野電気のこの分野における市場シェアは会社推定で16%。漁業向け48%と比べると存在感はそれほど大きくなく、収益性もそれほど高くないと思われます。

得意の漁業向けは、収益性は非常に高いと思われますが、生態系保護機運(クロマグロとか)の高まりで市場自体の成長性が見込めません。

10/2期決算は売上高が前期比2.9%減少となりましたが、主力の船舶用部門は実は9%減収と大きく落ち込んでいて、後発で参入した産業用電子機器(GPS関連やETC関連、医療機器など)の大幅増収(+20%)で補っています。

ところが、この産業用の利益率が極めて低いため営業利益は前年の1/4規模に縮小してしまいました。

11/2期の会社計画売上高は、6%減収(船舶用-3.3%、産業用-13%)見込みです。

船舶用では、商船向けが5%弱の減収見込みですが、プレジャー向けは増収、漁業向けもほぼ横ばい見込みです。

産業用の急減は、高速料金制度の変更によるETC車載器の特需がなくなることが要因で、GPS機器や医療機器その他では増収予想です。

トップライン(売上高)の見通しがそもそも全体的に甘めの印象です。

10/2期の四半期ごとの収益推移を振り返ってみましょう。

売上高は1Q:223億円、2Q:238億円、3Q:197億円、4Q:193億円、と2Q以降減収傾向が続いています。

経常利益は、1Q:10億円、2Q:8.4億円、3Q:-1.6億円、4Q:-7.1億円と、期を追って赤字が拡大しています。

会社では11/2期の営業利益横ばい(12億円)、経常利益43%増益(10億円→14億円)を見込んでいますが、直感的にはかなり厳しいと思います。

株価バリュエーションは、昨日終値(473円)基準で、11/2期会社予想PER 21.3倍、同予想ROE 2.0%に対しPBR 0.44倍、予想配当利回り 1.05%となっています。PBRが一見割安に見えますが、ROEがあまりに低く、これが5%以上に回復が見込める状況にならなければ特に妙味は感じられません。

終わった10/2月期決算が会社計画を大きく上回って着地したためか、株価は3月から4月にかけて400円近辺から500円近辺まで約25%上昇していますが、計画を上振れたとはいえ利益水準自体は大きく落ちており、また4半期ごとに見ても収益の回復感は出ていません。

将来的な成長シナリオも見えません。

買いたい気持ちはゼロですね。
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