昔読んだ株式投資の本で、こういうことが書かれていたことを記憶しています。
「人間は、2対1の割合で勝つチャンスがあれば、賭けに応じる。」というものです。
最近「アセットマネジメントの世界」(宇野淳監修、東洋経済新報社)という本を読み始めました。その中に、日本国内の株式リターンのバラツキ(1952~2008年)を示すチャートがありました。そこで、市場株価が上昇した年と下落した年の比率がどうなっているか数えてみました。2009年のTOPIXは5.6%の上昇でしたので、1952~2009年の58個のリターンに関して調べることができます。0%以上のリターンだった年の数は38でした。プラスの年の比率は65.5%です。下落した年が20ですので、上昇した年の数は下落した数の約2倍ということになります。
やはり株式投資を行う価値はありそうです。
さらに、月次リターンではどうか、と調べてみました。1991年2月から2010年4月9日までのTOPIXを見ると、月次データの総数231に対して月次リターンがプラスだったのが114となりました。49.3%が上昇した月の比率です。
月次ベースで投資をしても勝ち目はあまりないということでしょうか。それとも、観測期間が短すぎたのでしょうか。年次ベースの勝つ比率が65.5%というのは、長期投資が前提となる比率ということでしょうか。1990~2009年の年次リターンについてみると、上昇の年の数と下落の年の数は各々10ずつでした。1952~1989年では、上昇の年が28、下落の年が10ということになります。日本経済のファンダメンタルズが好調であるときのほうが株式リターンは良くなる、ということが確認されます。(もちろん、いい会社・国=良い投資対象、ということではありません。)
投資心理学の研究によれば、人間は自己を平均以上の能力を株式投資を行っている人は持っている、といいます。投資家がみんな平均以上ということはありえないにもかかわらず、そう考えているようです。株式投資の目標が、最小リスクでの最大リターンを達成すること、というだけであれば、個別銘柄投資をするよりも、市場インデックス連動の投信やETFに絞るべきでしょう。しかし、現実はこのような状況にあるとは言えません。しかも、いろいろな投資家が個別銘柄を売買するからこそ、各々の銘柄に妥当な株価が形成されてくるのです。妥当な株価形成が資本市場の機能発揮にとって非常に重要なのです。こう考えると、自分なりによく考えて個別株式投資に可能な限り参加することが社会人としての責任ともいえるのではないでしょうか。