スワナプーム国際空港の入国審査ゲートの長い行列に並びながら、腕時計を持たない僕は、iPhoneの時計を現地時間に合わせた。
すると、ゆっくりと時間が膨らみはじめた。
時間が膨らむというその感覚は、滞在中ずっと感じていることだった。
気候も人も街も、すべてがおおらかな土地。
自然体というか、とてつもなく「ゆるい」のだ。
やはり、タイに来て正解だった。
求めていたのはこの感覚。
金融経済危機により長かったアメリカ支配による前のめりの時代の終焉を予感させるなか、潮流が変わりつつある。
世界全体が既存のものではない、新たな価値観を模索しているなか、僕の中でアジアの風が吹いてきた。
専業トレーダーであるメリット。
それは限りなく自由な時間を自分の都合に合わせて使えることだ。
やりたいことは山ほどある。
タイのおおらかな時間のなかで、どこまで自己を解放できるか、精神状態をいかにしてニュートラルにリセットできるか。
それが今回の旅のテーマだった。
旅先ではトレードスタイルが短期から長期へシフトする。
なぜかそっちのほうが効率よく稼げるときがあるから不思議だ。
世界中で有り余っているお金がどこに向かって流れているか、俯瞰するにはもってこいのバケーション。
空港からはタクシーを利用した。
日本の半分以下の値段なので、躊躇なく使える。
クルマの窓からは、建築中の高層ビルが見えてくる。
道路にへばりつくように並んでいる屋台からは人々の熱気が伝わってくる。
赤信号で止まると初老の運転手が話しかけてきた。
「タイは初めてか?」
「ノー」
「タイのオンナ、ベリーベリーグッドね!」
「ニホンのオンナ、アダルトビデオ、オ○ンコ、スケベね!」
拙い英語で連発する下品なジョークを聞きながら、「ここは東京ではない。バンコクなのだ」と理解した。
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