☆アキ☆さんのブログ
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中国国際航空の思ひ出
北京から成都までのフライトはビジネスファーストクラスだった。
もちろん、正規にチケットを買ったのではなくオーバーブッキングだったのだが。
過去に数え切れないほど国際線を利用しているワタシであるが、いかんせんしがない庶民であるがゆえ
基本的にエコノミークラスばかり乗っている。
ビジネスファーストクラスに搭乗できるとわかった瞬間
狂喜のあまりチェックインカウンターの前でやったーっ!とばかり小躍りしてしまいそうになった。
そこでまず期待したのは機内食だった。
なんせ、久々のビジネスファーストクラスである。
大仰なフルコースを出され、 コン・リー似のキャビンアテンダントに、
「どうですか?メインディッシュのお味の方は?」
などと微笑まれるものだと勝手な妄想を抱いていた。
離陸前にはウエルカムシャンパンのサービス。
カシューナッツをつまみに青島ビールをオーダーする。
気圧のせいか、すでに酩酊状態に近い。
飛行機が水平飛行になり、しばらくするとカートが運ばれてきた。
スチュワーデスはコン・リー似ではなかった。
いや、むしろそれ以上の美貌の持ち主だった。
単純にもワタシのテンションは急上昇した。
さすが、中国国際航空さんや。CAもべっぴんを揃えとるのぅ。グフフ♡
定年後キャバクラにハマった遊びなれないオヤジのようにだらしなく顔を弛緩させる。
中国語の会話集を脳内ハードディスクから素早く検索する。
そして、インフルエンザの予防接種で行列を作る小学生のように緊張して、
自分が声をかけられるその瞬間を待った。
「お肉にします?お魚にします?」
ワタシはやや照れ気味に、「肉、いや、ビ、ビーフ、プリーズ!」と答えた。
情けないことにいざとなると中国語ではなく、不器用な英語しかでてこなかった。
客のテーブルの上には次々と料理が運びこまれた。
予想していたフルコースのようなものではなかった。
ま、ファーストクラスじゃないからな。
そう自分を慰めつつも、それなりに旨そうな食事に胸は高鳴った。
しかし、待てど暮らせどなぜかワタシの料理だけが運ばれてこないのである。
おかしい?
まさか、料理が足りなくなっているのではないかと不安になった。
すでに他のテーブルでは食事を終えている客もいるのだ。
ヤキモキしているところへ、ついに料理が運ばれてきた。
トレイの上にはパンやチーズ、サラダと並んでアルミホイルに包まれた筆箱のようなものが載っていた。
なんだろ、これは、と思った。
もしかして、ワタシだけのスペシャルサービスか?
美貌のCAが、おくゆかしくもワタシに一目惚れしてしまったがゆえのささやかな求愛のアプローチなのか?(笑
いや、それはいくらなんでも自惚れすぎだ。
おそらく肉が足りなくなったので、特別にシェフが調理したものだろう。
そうだ、そうに違いない!と都合よく解釈した。
(シェフが乗っているはずはないが、そのときは完全にそう勘違いしていた)
その時のワタシは、ずっと欲しかった玩具を買い与えられた子供のような
屈託のない笑みを浮かべていた筈である。
中国国際航空も粋なことしてくれるね。
どんな美味しそうな料理がでてくるんだろう。
その期待は空腹によって、もはやピークに達していた。
「よーし、食うぞ!」
ワタシは心の中でそうささやき、元気よくアルミホイルをはずした。
カレーライスでした。
カレーライスでした。
カレーライスでした。
落胆のあまり、心の中で何度もリピートしていた。
これはどうみてもビジネスファーストクラスの食事ではなく、エコノミーの食事である。
しかも、ビーフを注文したのに出てきたのは単純なカレー。
美人CAは忙しそうに他のお客にサービスしている。
ワタシはしばらくクレームをつけることができずにいたが、 意をけっしてこれはいったいどういうことなのかと訊いた。
彼女の説明では、お客様は本来エコノミークラスなので、料理もとうぜんエコノミーということだった。
チョイスしたのはビーフだが、たしかにカレーには牛肉が入っている。
釈然としなかったが、無理やり自分を納得させた。
やはり、人生はそんなに甘くはないということだ。
「ハオツー」←美味しいという意味
と、小声で感謝の意を伝えた。
しかし、そのときの私の顔は株のトレードで損失を出したときと同じだったはずだ。
食事を済ませた後、まもなく到着しますのでシートベルトをお締めくださいというアナウンスがあった。
成都に着いたら、とびきり旨い四川料理を食おう。
窓からどんよりと曇った四川の空を眺めながらそう決意した。
すごく楽しく読ませていただきました。
期待通りのオチで、人生甘くないというのが良く分かりました。
でも、きれいなCAさんとお話できただけでも、十分うらやましいです♪