何年も土の中で過ごし、脱皮して鳴けるように
なった蝉は、そのわずかな期間を精一杯生きます。
そのような蝉を、人間の生まれ変わりとする伝承
が各地に数多く残っているそうです。
http://www.palnetwork.com/chie/toku/1998/toku8-3.html
蝉の抜け殻を「空蝉(うつせみ)」と呼びます
が、もともとはこの世に生きる人という意の「現
身・現し臣(うつしおみ)」が語源で、現世とい
う意味も持ちます。
空蝉という言葉は、樋口一葉の短編や源氏物語
の表題にも使われ、万葉集などでの「うつせみ」
は「人」や「世」にかかる枕言葉です。蝉の儚さ、
空蝉のすぐに壊れてしまいそうな脆さや危うさは、
まさに「人」であり「世」であるような気がしま
す。
ちなみに源氏物語に登場する空蝉は作者である
紫式部自身がモデルではないかと言われています。
たった一度だけ肌を合わせたものの、その後は拒
絶を続けた空蝉は、源氏にとって生涯忘れること
のできない女性として描かれています。
また、一葉は「とにかくに越えてをみまし 空
蝉の 世渡る橋や夢の浮橋」と詠み、儚い世の中
なれどとにかく生きていこうとの思いを歌にして
います。