ソーシャルアントレプレナーのオピニオンリーダーとしてゲイツ氏がバフェット氏と組んで世界最大規模の慈善団体を運営しているのは有名なハナシ。
タイトルからしてゲイツとバフェットの対談集かと思いきや、然に非ず。
お二方の対談は最初の20ページぐらい。
概要は、彼らが提唱している「企業からの寄付金」や、「貧しい人々のためになる活動へ企業を参加させるインセンティブ」という手段について、お偉方の大学教授やアナリストが批判や実現の可能性を論じているというもの。
寄稿者には、あのローレンス・サマーズやヴァーノン・スミスなど錚々たる面子が顔を揃える。
つまるところ、現在の資本主義システムがかかえる一部の人に富が集中してしまう欠陥を、まさにその資本主義の恩恵で富を築いた人達が「これではいかんぜよ!」と問題提起し、解決の糸口を模索しているってわけ。
まぁ少なくとも本書を読めば、今の世界経済のかかえる根本的な問題がわかったような気になる。
ビル・ゲイツが2008年にダヴォス会議で講演した「創造的資本主義」(クリエイティブ・キャピタリズム)が日本語訳で読めるのはありがたい。
その内容についてはWEB上でも賛否両論だけど。
以下、日本語で読めるものをUP。
http://japan.cnet.com/column/pers/story/0,2000055923,20366973,00.htm
http://japan.cnet.com/column/pers/story/0,2000055923,20366250,00.htm?deqwas_inflow=relation
ビル・ゲイツは売名行為としてではなく、本気で私財を投じて世界を変えようとしている熱意は伝わってくる。
自分が死んだ後、相続税としてアメリカ政府に資産をむしりとられたくないって算段はあるにせよ、やはり彼は真剣に我々の未来を憂慮しているようだ。
もちろんそれは、マスコミで煽っているようなエコとか地球温暖化とかのような浅いレベルではない。
ちなみにバフェット氏は死後自身の財産の大半をゲイツの財団に寄付すると約束している。
福音派キリスト教の教えからか何だかしらないけど、アメリカにはカーネギーといいロックフェラーといい成功した資産家が富を社会に還元するというマインドがあるよね。
日本には大金持ちが、私財を蓄えて、公共のために使う、といったハナシはあまりきかない。
企業家も政治家も、考えているスケールがでかいところが米国の強みだ。
世界金融危機を招いたアメリカ資本主義だが、その懐もまた深く、なんだかんだいって今後もその経済的覇権は揺るがないと思った。