道徳を棲守する者は、一時の寂寞たり。権勢に依阿する者は、万古凄涼たり。
達人は物外の物を観じ、身後の身を思う。むしろ一時の寂寞を受くるも、
万古の凄涼を取ることなかれ。
(人間としての道を通そうとする者は、一時的には不遇で苦境に立たされる
こともある。権力におもね、へつらう人間は一時的には栄進もするし、虎の
威を借りて居心地もよいが、やがては永遠の孤独に苦しむことになる。
達人は、世俗を超えたところに真実を見いだし、この世を去ったあとの
自分の名を惜しむ。片時の寂しさを味わうことがあっても、そのために永遠に
孤独を招くようなことをしてはならない。)
引用 菜根譚を読む 著者 井原隆一