午前0時。
コパンガンはハードリンビーチ。
フルムーンパーティーはいままさにピークを迎えようとしていた。
日本人もチラホラいたが、すみっこのほうで申し訳なさそうに踊っている。
ビーチの目立つ場所にはガタイのでかい白人のネーちゃんや兄ちゃんでごったがえしている。
これではいかん!と思った。
ナメられてしまう!
負けるのはサッカー日本代表だけで十分だ。
日本人はただでさえ存在感が希薄で、集団で固まって行動しないと何もできないと思われるのは屈辱以外のなにものでもない。
ここはやるしかない!と決意した。
Underworldの初期のヒット曲“Rez”がかかった。
眠っていたソウルに火がついた。
アングロサクソンの連中に見せつけてやった。
“大和魂”の入ったダンスを。
ヒートアップ!アクセルは全開だ!
獣のようなマッチョな野郎ドモと互角のダンスバトル。
オレの一挙一動に熱い視線が注がれる。
それも当然といえば当然だろう。
日本古来の伝統芸能である“阿波踊り”のエッセンスを巧みに取り入れたその動きは、西洋人には決して真似のできない独自のリズムを刻んでいるのだ。
頭には捻り鉢巻というスタイルも異彩を放っていたと思う。
オレの醸し出すハートウォーミングなバイブレーションに触発されたのか、回りにはノリのいい連中が集まってきた。
イビサやマイアミのクラブでも沙汰にお目にかかれない斬新極まりない変態タコ踊りは、視覚的にも十分インパクトがあったと自負している。
たとえ悪趣味だとしても、パーティーでは目立ったモン勝ちなのである。
オレはその傍若無人な行動哲学をパリス・ヒルトン嬢から学んだ。
誰もが喜色満面で楽しそうに踊っていた。
自身も、してやったりと会心の笑みを浮かべていた。
日本人は大人しくてシャイというイメージを払拭してやったのだ。
ざまーみろ!
La Fin