木下 晃伸さんのブログ

最新一覧へ

« 前へ167件目 / 全437件次へ »
ブログ

【投資脳のつくり方】アナリストの真価が問われている

────────────────────────────────────
【本日のニュース】/信越化、今期見通し示せず
────────────────────────────────────


信越化学工業(4063)は28日午後、2009年3月期の連結決算を発表した。例年であれば今期(10年3月期)の見通しを同時に示すが、今回は「適切な予想をしかねるので、現時点では(今期見通しは)未定」(笠原俊幸取締役経理部長)として公表しなかった。経営陣が見通せないほど不透明な環境に買い控えムードは強まりそうだ。


同社が通期の連結見通しを示さなかったのは「2003年3月までは連結決算予想を出しておらずその時以来」(笠原取締役)という。前期の決算は7日に発表した見通しにほぼ沿った内容で材料にはなりにくかった。決算発表は13時、前場高かった信越化の株価は米金融システム不安の再燃など外部環境の悪化の影響で後場は下げに転じた。


同社の中村健広報部長は「ここ半年は月中で(月初に計画した販売の)数字が変わる。4月の数字も見えない状況」と説明。まさに手探り状態だ。中村部長は、主力のシリコンウエハーは「(300ミリサイズは)3月、4月と出荷枚数が増えた」と話す半面、「一部の(半導体)メーカーは稼働率を上げているものの、自動車や携帯電話、パソコンなどの最終需要を見通すことができない」と不透明感をにじませた。(中略)


回復のきっかけをつかむためには、細かな情報開示はかかせない。決算会見では「月次業績の開示などをおこなわないか」との質問が出たが、中村部長は「四半期決算の開示を充実させている。実績を出していくなかで、アナリストに予想してもらう」と答えるにとどまった。これでは個人投資家を中心に手探り状態での投資が避けられそうもない。


(2009/04/28日経速報ニュースより一部抜粋)


────────────────────────────────────
【ニュースの深層】アナリストの真価が問われている
────────────────────────────────────


■いつもメールマガジンをお読みいただきありがとうございます。


経済アナリスト、木下晃伸(きのした・てるのぶ)です。


本日は休日特別号でお送りしています。



■本日のニュースで取り上げた、信越化学工業は、私が今から約10年前に初めて運用業務に従事し、化学担当となってからずっとウォッチさせていただいている会社です。


記事に登場する、笠原取締役や中村部長には、私が駆け出しの頃からお世話になっており、アナリスト、ファンドマネジャーとしての基礎を作ってくださったと、改めて感謝の気持ちでいっぱいです。



■そして、今回もまた信越化学の強さを実感しています。


具体的には、「業績予想を出さない」という姿勢。


もちろん、各社の多くは業績予想を出してきていますが、何も決められているわけではありません。業績予想を出すのは、会社側としては、投資家をはじめとした利害関係人に対する「サービス」であると考えるべきです。



■業績予想という事に関しては、思い出があります。それは、ITバブルが崩壊した後の2002年ごろ。


当時も、ITバブル崩壊後の景色があまりにも不透明で、多くの企業が業績を下方修正し、さらに見通しを示すことができない、という事態に陥りました。


すると、ある著名なアナリストが、「キレて」しまい、経営陣に対し「どうして予想を開示しないんだ、下方修正するなんてマネジメントに問題がある」と怒鳴りつけているわけです。


そのアナリストは、下方修正をし、業績予想を出さかったその某会社に対して「Buy(買い)」レーティングを発表していました。それが、結果として大間違いに。


だから、顔に泥を塗られたとでも言うのでしょうか、怒鳴りつけた、というわけです。



■しかし、それってどうなんでしょうか。当時、その説明会に出席していた私の頭の中は、「???????」でした。


というのも、業績予想を行なうのが仕事であり、仮に予想数値を間違えたのであれば、自分自身の分析に何かが足りない点を考えなければならないはず。


前提条件を間違えたのか、環境変化を読み違えたのか、それとも、そもそも会社が行なっているビジネスについての知識が少なかったのか・・・


すべては、アナリスト自身に責任があるだけのことです。



だから、それをプロであるアナリスト自身が会社に対して文句を言う、という事自体プロ失格ですし、意味が分かりません。


そもそも会社側が言っていることを信じてしまって、自分自身で分析を行う事無く間違えてしまったのであれば、存在意義はなく辞めてしまえばいいと思ったのです。



■そこで、翻って今回の信越化学の決算数値が発表されていない、ということに戻ってみたいと思います。


たしかに信越化学は決算を発表していないかもしれない。しかし、それは予想をする上で、正直「どちらでもいいこと」。


信越化学の中村部長は「四半期決算の開示を充実させている。実績を出していくなかで、アナリストに予想してもらう」という言葉は「その通り」です。


駆け出しの頃に、信越化学をしっかりと分析することで、プロとしての心構えを学ばせてもらった事は、いま考えても財産に代え難いものだったと思います。



■アナリストやファンドマネジャーの仕事は、会社側が発表する予想をそのままに投資をしているわけではありません。


プロであれば、会社側が発表していなくとも、業績予想を行なう事ができるはずです。


ただし、そのためにはやはり「ヒント」を多く持っていた方がいい。


私はそのために、「靴底を減らした取材は嘘をつかない」を座右の銘に、徹底的に取材を繰り返し、ヒントを探しだす努力をしているわけです。


ヒントは現場に眠っています。だからこそ、いつも愚直に取材を繰り返さなければならない。


決算発表が本格化してきたタイミングは、会社側が予想を発表しているのであればその根拠を徹底的に分析することが必要です。


そして、その分析結果を体系的に積み上げていき、さらに取材によって確信度を高めていく。


不透明な環境だからこそ、徹底的な取材を繰り返し、ひとつでも先を読み通す事ができるヒントを探し出していく貪欲な姿勢を持ち続けたいと考えています。



(文責:木下晃伸 きのしたてるのぶ)


------------------------------------------
■■とうとう、株式市場に【新展開】が訪れ始めた■■

木下 晃伸がお伝えするゴールドレポートのお申し込みはコチラ!

http://terunobu-kinoshita.com/mailmagazine.html 
------------------------------------------
1件のコメントがあります
  • イメージ
    川島 寛貴(Kshima)さん
    2009/4/29 16:10
    休日にも関わらずお疲れさまです! 人に歴史ありですね(^-^)v

    アナリスト自体が減っている中、更に真価が問われる時代に入ってきたんですね。
コメントを書く
コメントを投稿するには、ログイン(無料会員登録)が必要です。